☩教皇の復活祭メッセージ-ウルビ・エト・オルビ(ローマへ世界へ)-「復活されたキリストは、失われることのない希望」

 

*イエスの傷から希望の恵みをいただける、気落ちすることはない

 また、教皇は、主の復活の希望のメッセージは「十字架につけられたイエスは、死から蘇られた」と簡潔に伝えている、とし、「父なる神は、『私たちの弱さ、脆さ、罪の重さ、そして私たちの死さえも、ご自身で負われることで、救いの意思を達成されたイエス』を復活させられのです。それゆえに、父なる神は彼を称え、イエス・キリストは永遠に生きておられますー彼は主なのです」と説かれた。

 そして、イエスが手、足、脇腹に負われた傷は「私たちへの愛の永遠の封印」であり、肉体的、精神的な試練を経験するすべての人はその中に避難し、「希望の恵みを受けることができる。気を落とすことはありません」と勇気づけられた。

 

 

*コロナ禍の下で医療従事者の努力に感謝し、全ての人に希望と連帯を求める

 教皇はさらに現在も続く新型コロナの世界的大感染に触れ、「復活されたキリストは、新型コロナの感染で苦しむ人々、病気の人々、そして愛する人を失った人々に、希望と慰めを与えてくださいます」と被害を受けている人々を励ますとともに、コロナと戦っている医師や看護師の勇気と努力に感謝し、主が彼らを支えてくださるように、と祈られた。

 また、すべての人、特に弱者は助けを必要とし、世話を受ける権利があり、ワクチンが不可欠であることを強調。国際社会に対し、「ワクチンの配布の遅れを克服し、特に最貧国でのワクチンの配布を促進することに責任を持つように」求めた。

 教皇はコロナの経済的、社会的影響に関しても、「復活された主は、職を失ったり、経済的困難に苦しんだりしている人々にとっての慰め」とされ、「コロナ禍が事態を劇的に悪化させている悲しい現実ーすべての人、特に最も困窮している家族が貧困に陥りつつあるーことに、各国政府や公的機関が積極的に対処する」ようキリストに願われた。

 また、学校に通ったり、友人の家を訪ねたりできず、家にいることを余儀なくされる若者の心理的な負担についても言及され、そのような現実を理解し、世界中の若者に寄り添うことを強調された。

 

*世界の全ての地域に平和をもたらされるように、関係者の努力を強く求める

 さらに教皇は、故聖ヨハネパウロ2世がハイチを訪問された時に語られた言葉を引用して、「あらゆる種類の貧しい人々は、もう一度、希望を持ち始めなければなりません」と述べ、「愛するハイチの人々」にも向ける形で、「自信と希望を持って未来に目を向けるように、今直面している困難に圧倒されないように」と励ました。

 また、2月初めの軍事クーデター以降、軍の市民弾圧により多数の死傷者が出ているミャンマーの、特に若者たちのために、「民主主義を支援し、彼らの声が平和的に聞かれるように。そうして、憎しみが愛によって拭い去られるように」と祈られた。

 戦争と極度の貧困から逃れた難民・移民たちについて、彼らの中に、ゴルゴタの丘への道で「主の傷ついた苦しみの顔」を見るように、「復活されたイエスの光が、再生の源となる」ことを願い、そのためには、あらゆる関係者に「連帯と友愛の具体的なしるし」が必要、と指摘。

 具体例として、近隣のシリアでの暴力から逃れようとする数多くの難民を受け入れたレバノンとヨルダンを挙げるとともに、避難民を受け入れる国々に感謝を示された。そして、レバノンの人々が、このような困難な時期に、国際社会からの支援を得、「出会い、共存、多元主義の地」であり続けられるように祈られ、さらに「私たちの平和であるキリストが、何百万もの人々が苦しむ「戦争で荒廃した愛するシリア」で続く武力衝突を止めてくださるうように」と祈られた。

 教皇はまた、イエメンの苦しむ人々を「鼓膜を破るような、あまりに酷い沈黙」と表現される一方、リビアでは「流血と不安の10年がようやく終わりを迎える、という希望が出ている」とされ、これらすべての地域で紛争を終結させ、戦争に疲れた人々が平和に暮らすことができるように、生活の場と共同体社会を再建することに、すべての関係者がコミットするよう促された。

 

*「兄弟姉妹」として生きよう

 「主の復活は、私たちをエルサレムに連れて行く。そこで私たちは主に、平和と安全を与えてくださるよう願います。すべての人が兄弟姉妹としてお互いを見ることができる場所となるように、との呼びかけが受け入れられます」と教皇は語り、イスラエル、パレスチナ双方に対して、「2つの国が平和と繁栄の中で共存できる解決策を見つけられるように、「対話の力を再発見する」努力を求めた。

 先のイラク訪問についても触れ、この国が「平和への道」を続け、「すべての子供たちをもてなし、歓迎する人間の家族に対する『神の夢』を実現する」ように祈られた。

 

 

*「戦争」という固定観念を克服するように

 さらに教皇は、アフリカ、特にサヘル地域(サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域)、ナイジェリア、エチオピアのティグレ州、モザンビークのカボ・デルガード州での内部暴力と国際テロに苦しむ場所に関心を向けられ、「和解と真の連帯の精神による対話」を通じて紛争が平和的に解決されることを祈られた。

 「あまりにも多くの戦争と、あまりにも多くの暴力が私たちの世界を悩ませています」と慨嘆された教皇は、「私たちの平和である主が、戦争に関する固定観念を克服するのを助けてくれますように」と祈られた。

 また教皇は、明るい動きとして、ウクライナ東部とナゴルノ・カラバフでこれまでの戦闘で捕虜となった人々が釈放され、軍拡競争が抑制される可能性が出ていることを評価するとともに、今日、4月4日が「 地雷に関する啓発 および地雷除去支援のための国際デー」であることを指摘され、「この『陰湿で恐ろしい装置』が、毎年多くの罪のない人々を殺したり傷つけたりしています。このような『死の道具』がなければ、私たちの世界はどれほど良くなるでしょう」と地雷の除去、廃絶の必要を強調された。

 

 

*世界中で崇敬と信教の自由へ規制が解かれるように

 メッセージの最後に、教皇は、「世界の非常に多くの場所で、キリスト教徒が(注:コロナ禍や宗教弾圧などによる)厳しい規制・制限の下で復活祭を迎え、ミサに与れない現状」があることを指摘し、「世界中で、崇敬と信教の自由に対するあらゆる規制・制限が解かれ、すべての人が自由に神を祈り、賛美することができるように」なることを祈られた。

 そして、多くの困難の中で、「私たちはキリストの傷によって癒された」ことを、復活された主の光の下で「私たちの苦しみは今、変貌している…死があったところに、今は命がある」ことを、いつも思い起こさねばならない、と信徒たちを促された。

 そして、こう締めくくられたー「私たちは、その癒しの恵みが世界中に広がることを祈ります。皆さん、主の復活おめでとうございます!」

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年4月4日