☩教皇「自衛の権利はある。だが、『正戦論」は再考の必要」(Crux)

 

(2022.7.1 Crux Rome Bureau Chief Ines San Maritin)

ローマ– 4世紀に、聖アウグスティヌスはキリスト教の「正戦論」の最初の強力な支持者になったー戦争がさらに悪い状況を招くのを防ぐために、場合によっては道徳的に正当化されるーというものだ。だが、教皇フランシスコによれば、その概念を再考する時が来ている、という。

 教皇は、1日に公開されたアルゼンチンの通信社Telamとの90分間のインタビューで、次のように語られた。

 「私は、『正戦』の概念を再考する時が来たと信じています。ある戦争は正しいかも知れない。自分自身を守る権利はある。しかし、その概念の現在の使われ方を考え直す必要があります」とし、「戦争はただのことかもしれません。 自分を守る権利があります。 しかし、私たちはその概念が今日使われている方法を再考する必要があります。 私はこれまでも言ってきました。核兵器の使用と所有は不道徳だ、と。 戦争を通じて紛争を解決することは、言葉による論法、建設的であることを否定することです」と言明した。

   教皇はさらに、「あなたが、何人かの人と話をする、としましょう。あなたが話し終わる前に、他の人が話し出して邪魔をします。どうしたら互いに耳を傾けられるのか、分からないのです。他の人が話している時に、終わるまで聴き、耳を傾けねばなりません。他の人が言おうとしていることを受け取りましょう。戦争を始める場合、通常は宣戦を布告します。つまり、対話を打ち切る。戦争は、本質的に”対話”の欠如です」と述べた。

 また、ウクライナにおける軍事紛争は、第三次世界大戦に極めて近い状況になっている、と警告する一方で、25年前のルワンダでの紛争、シリアでの過去10年間の戦争、レバノンとミャンマーでの紛争を取り上げ、世界各地で”分散化した第三次世界大戦”が起きている、との持論を強調。「悲しいことですが、戦争は残酷です。戦争は宮廷円舞曲を踊ることではありません。それは殺害です。そして、それを起こす武器取引の世界的な構造が存在します」とし、「世界が兵器の生産を止めれば、1年間、世界の飢餓を止めることができます。それを裏付ける統計があります」と語られた。

 教皇また2014年にイタリアのレディプグリアにある第一次世界大戦記念碑に訪問したことを思い起こして「私は死者の年齢を知って泣きました」、さらにアンツィオ戦争墓地に行った時、「埋葬された男の子の年齢を見て泣いた、とし、 「私はそのことを言うのは、恥ずかしいと思いません」と述べた。 「そして、ノルマンディー上陸作戦を記念した海岸で、命を落とした3万人の少年のことを考えました。連合軍の部隊は、ナチスが待ちかまえている海岸を攻撃するよう命じられました。それは正当化されますか?ヨーロッパの戦死者の墓地を訪れることは、あなたの目を開かせるのに役立ちます」と言われた。

 第二次大戦の反省の下の作られた国際連合の機能について、 「批判することで誰かを怒らせるのは私の本意ではない。国連に非常に優秀な人々が働いていることは知っています。だが、現時点では、国連には戦争を防ぐのに役立つ権限を行使する力がありません」とされ、「現在、危機に瀕している、あるいは対立している”著名な国際機関”がいくつかある。危機は進歩につながる可能性があるが、”勇気と創造性”をもって、進行中の「死の状況」を克服できる国際機関はありません」と述べた。

*教皇としての10年は

 インタビューでフランシスコは、教皇就任からの10年についても振り返り、こう語られた。

 「私がしたことは何も独創的なものはなかった。2013年初頭に教皇ベネディクト16世が辞任された後、ローマで開催された教皇選挙の前の会議で、新教皇に要求される進路は設定されていました。成果は、私の独創でも、消化不良の夜の後に私がみた夢でもなかった。私を含めた枢機卿団が教皇選挙前の会議で述べたこと、新教皇がすべきだと信じていたことを、私はすべて拾い上げたのです」

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月2日