☩「核兵器は”平和”の幻想の中でリスクを増大させる」ー核兵器禁止条約第1回締約国会議へ

教皇フランシスコ 2019年11月19日 広島訪問で2019年11月19日の広島訪問で、祈りを捧げられる教皇フランシスコ  (Vatican Media)

 教皇フランシスコが21日、同日ウィーンで始まった核兵器禁止条約第1回締約国会議にメッセージを送られた。

 メッセージで教皇は、「現在の世界の状況の中で、軍縮について語ること、あるいはそれを支持することは、多くの人には矛盾したものに見えるかも知れません」と前置きし、それにもかかわらず、「国と世界の安全、兵器拡散のリスクをめぐる近視眼的アプローチの危険を自覚する必要」があることを強調された。

 そして、「私たちがが軍縮に取り組まなければ、その代価として支払われるのは、無実の人々の命です」とされ、「すべての武器を収め、精力的な交渉によって紛争の原因を取り除くように」と訴えられた。

 また、教皇は、「ある人たちの安全と平和が、集団の安全や他の人の平和と切り離されたものだ、と考えるのは、錯覚であり、非生産的な考え方です」と指摘。新型コロナウイルスの世界的大感染が私たちに与えた教訓を生かすように求められた。

 さらに、「バチカンは、核兵器のない世界は必要であり可能と確信します」とされ、「核兵器は、重大で危険な責任を人々に負わせ、”一種の平和”の幻想を与えながらリスクを増大させるもの… 核兵器の使用および保有は倫理に反します」と強調された。

 「国際的な軍縮合意や国際法に加わること、それを尊重することは、弱さの表現ではありません… 信頼と安定を育む、強さと責任の源となり、核兵器禁止条約がそうであるように、被害者への援助と環境の修復へ国際的協力を促すものとなります」と訴えられた。

 また教皇は、広島と長崎の原爆の被爆者はもとより、核兵器実験のすべての犠牲者に思いを向けられるとともに、核兵器禁止条約を実効あるものとするための基礎を固め、人間の尊厳と兄弟愛に基づく命の文化と平和への道を着実に歩むよう、会議の参加者はじめ世界の指導者たちに強く促された。

 なお、このメッセージは、この会議の議長、アレクサンダー・クメント・オーストリア外務省軍縮局長あてに出され、会議初日の21日に、バチカンのポール・リチャード・ギャラガー外務局長が代読した。

(編集「カトリック・あい」)

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2022年6月22日