☩「核兵器で世界を壊滅させるな。暴力と死の連鎖を止めるように」教皇、ロシア大統領に懇願ー「ポンペイのロザリオの聖母に祈りを」

 (2022.10.2  Vatican News)

   教皇フランシスコは2日、年間第27主日の正午の祈りを前にした説教で、長期化するロシアのウクライナ軍事侵攻を取り上げた。教皇はその中で、プーチン大統領が核兵器の使用をほのめかしていることに深い懸念を表明、関係国に対して即時の停戦を強く訴えられた。また、ロシアがウクライナの占領地域の併合を宣言したことに遺憾を表明し、すでに何千人もの犠牲者、特に子供たちに多くの犠牲者が出ていることを深く悲しまれ、「すべての国の領土の保全と少数者の権利の尊重」を強調された。

 この中で、教皇は、「ロシアの大統領」という表現で、「国民のためにも、この暴力と死の連鎖を止めるように」と懇願された。

 これまで、教皇はプーチン大統領を刺激しないように、名指しで批判することを慎重に避けられてきたが、核兵器の使用をほのめかす発言や、ウクライナの領土の一方的なロシア領宣言など、余りにも理不尽かつ危険な言動を目の当たりにして、危機感を深め、”実名”の使用に踏み切ったものと推察される。(この部分「カトリック・あい」)

  以下は教皇のイタリア語による説教を英語の暫定訳にしたものの日本語訳。

兄弟姉妹の皆さん、こんにちは!

 ウクライナでの戦争は非常に深刻な事態になっています。壊滅的で脅迫的であり、大きな懸念を引き起こしています。ですから、今日の正午の祈りに先立つ考察全体を、この問題に当てようと思います。今、人類に対するこの恐ろしく想像を絶する傷は、治癒するどころか、さらに多くの血を流し続け、さらに広がる危険を冒しています。

 私は、(注:ロシアがウクライナに対する軍事侵攻を始めて)この数か月で流されている血と涙の川に心を痛めています。何千人もの犠牲者、特に子供たちの犠牲、そして多くの人々や家族が家を失い、寒さと飢え、この広大な地域を脅かす破壊で悲嘆にくれています。(注:平和に暮らしていた人々を武力で蹂躙する)行動は決して正当化できません。

 ブチャ、イルピン、マリウポリ、イジューム、ザポリージャ など(注:武力で激しく破壊され、住民が殺されている都市の)名前から、世界がウクライナの地理を学んでいるのは悲しいことです。そして、人類が再び核の脅威に直面しているという事実をどう思いますか?馬鹿げています。

 次に何が起こるのでしょうか?戦争は決して解決策ではなく、破壊にすぎないことを理解するのに、あと、どれだけの血が流されねばならないのでしょうか?神の名において、そしてすべての人の心に宿る人間性の名において、私は即時の停戦を改めて呼びかけます。

 武力による解決ではなく、合意に基づく公正で安定した解決につながる交渉の条件を模索しましょう。そして、人命の神聖な価値、各国の主権と領土保全、少数者の権利と正当な関心事の尊重に基づくなら、そのような解決は可能です。

 私は、国際法の原則に反するさらなる行動を伴う、最近、引き起こされた重大な状況を深く遺憾に思います。それは核兵器の使用による戦争拡大のリスクを増大させ、世界中で制御不能で壊滅的な結果をもたらす可能性を高めます。

 私の訴えは、何よりもまずロシアの大統領に向けられています。大統領自身の国民のためにも、この暴力と死の連鎖を止めるよう懇願します。一方、ウクライナ国民が被っている(注:ロシアによる軍事侵略の結果としての)計り知れない苦しみを深く思い、ウクライナ大統領に対し、和平のための真剣な提案が出されれば応じる用意をするよう、強く訴えます。

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 私は、国際社会のすべてのリーダーたち、各国の政治指導者に対し、危険な戦争の拡大に巻き込まれることなく、戦争終結のために、可能な限りのことを行い、対話の実現を促し、助けるよう、強く求めます。世界の若い世代に、狂気の戦争の汚れた空気ではなく、平和の新鮮な空気を吸わせてください!

 7か月にわたる敵対行為の後、この酷い悲劇に終止符を打つために、これまで試みられなかった手法も含め、できる限りの外交的な手段を使いましょう。戦争そのものが過ちであり、恐怖なのです!

 心を変えることができる神の憐れみと、平和の女王である聖母マリアの執り成しに信頼して、ポンペイの巡礼聖堂に集まった信者たち、そして世界の多くの場所にいる信徒たちとの霊的な一致のもとに、ポンペイのロザリオの聖母(写真)に祈りを捧げましょう。

*注:「ポンペイのロザリオの聖母」は勝利の聖母としても知られており、そのロザリオは世界の罪と悪との戦いにおける精神的な武器と見なされている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年10月2日