☩「戦いを止め、平和をもたらしてください」ー教皇の「マリアの穢れなき御心への奉献の祈り」バチカン放送訳+中央協議会訳

教皇フランシスコ ポルトガル・ファティマ巡礼で 2017年5月13日 教皇フランシスコ ポルトガル・ファティマ巡礼で 2017年5月13日  

 25日に予定される教皇フランシスコによる、ロシアとウクライナの「マリアの穢れなき御心への奉献の祈り」の全文が23日、発表された。 教皇は、世界のすべての司教、司祭に、この祈りで一致するよう求められている。

 教皇は、イタリア時間3月25日午後5時(日本時間3月26日午前1時)から、バチカンの聖ペトロ大聖堂で行われる共同回心式の中で、ロシアとウクライナをマリアの穢れなき御心に奉献される。教皇による奉献の祈りは、午後6時半前後に予定されている。25日には、ポルトガルの聖母巡礼地ファティマでも、教皇特使、コンラート・クライェフスキ枢機卿によって、聖母の穢れなき御心への奉献が行われる予定。

 教皇が唱える祈りの全文(日本語訳)は以下のとおり。

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マリアの穢れなき御心への奉献の祈り

 神の御母、私たちの母、マリアよ、この懊悩の時、あなたにより頼みます。母であるあなたは、私たちを愛し、私たちをご存知です。私たちが心に抱くいかなるものも、あなたに隠すことはありません。慈しみ深い母よ、私たちは何度も、あなたの配慮ある優しさ、平安に導くあなたの存在を体験しました。なぜなら、あなたは、私たちをいつも、平和の君であるイエスに導く方だからです。

 しかし、私たちは平和の道を見失いました。私たちは前世紀の悲劇の教訓を、世界大戦の無数の死者たちの犠牲を忘れました。国々の共同体としての義務を尊重せず、人々の平和への夢と、若者たちの希望を裏切りました。私たちは強欲に取りつかれ、国益の中に閉じこもり、無関心によって心はひからび、エゴイズムによって麻痺してしまいました。

 神を無視することを選び、欺瞞と共に生き、攻撃性を増し、人命を殺め、軍拡に走り、自分たちが隣人と共通の家を守るべき者であることを忘れました。地上の園を戦争によって破壊し、私たちが兄弟姉妹として生きることを望まれる、御父の御心を罪によって傷つけました。自分たち以外の、すべての人、すべての箏に対し無関心になりました。私たちは恥をもって言います。主よ、お赦しください!

 罪の惨めさの中で、疲れと弱さの中で、悪と戦争の不条理の中で、聖なる母よ、あなたは、神は私たちを見捨てられず、愛の眼差しを注ぎ続け、私たちを赦し、再び立ち上がらせたいと望んでおられることを思い出させてくださいます。神はあなたを私たちにお与えになり、あなたの穢れなき御心を教会と人類のよりどころとしてくださいました。神の善によって、あなたは私たちと共におられ、歴史の最も暗い曲がり角においても、私たちを優しく導いてくださいます。

 私たちは、あなたにより頼み、あなたの御心の扉をたたきます。あなたは、愛する子である私たちをいつも見守り、回心へと招かれます。この闇の時、私たちを救い、慰めに来てください。私たち一人ひとりに繰り返してください。「あなたの母である私が、ここにいないことがあるでしょうか」と。あなたは私たちの心のもつれと、時代の困難を解くことがお出来になります。私たちはあなたに信頼します。特に試練の時、あなたは私たちの祈りを蔑むまず、助けに来てくださる、と確信しています。

 ガリラヤのカナで、あなたはイエスの助けを促され、イエスの最初のしるしを世界にもたらしました。婚礼の祝いが悲しみに変わった時、「ぶどう酒がなくなりました」(ヨハネ福音書2章3節)と、あなたはイエスに言われました。

 御母よ、神にその言葉をもう一度繰り返してください。今日、私たちに希望のぶどう酒はなくなり、喜びは消え去り、兄弟愛は薄められたからです。私たちは人間性を見失い、平和を壊してしまいました。あらゆる暴力と破壊をしうる者となってしまいました。私たちはあなたの母なる助けを急いで必要としています。

 御母よ、どうか、私たちの願いを聞き入れてください。
海の星であるあなたよ、戦争の嵐の中で私たちを遭難させないでください。
新しい契約の櫃であるあなたよ、和解の計画と道を呼び起こしてください。
「天の大地」であるあなたよ、神の調和を世界にもたらしてください。
憎しみを消し、復讐を宥め、赦しを教えてください。
戦争から私たちを解放し、核兵器の脅威から世界を守ってください。
ロザリオの元后、祈り、愛することの必要を呼び覚ましてください。
人類家族の元后、人々に兄弟愛の道を示してください。
平和の元后、世界に平和をお与えください。

 御母よ、あなたの嘆きが、私たちの頑な心を動かしますように。あなたが私たちのために流した涙が、憎しみで干上がった谷に再び花を咲かせますように。武器の音が止まぬ中、あなたの祈りが、私たちを平和に向かわせますように。あなたの母なる手が、爆撃の下で苦しみ、逃げまどう人々に優しく触れますように。あなたの母なる抱擁が、家と祖国を後にせざるを得ない人々に慰めを与えますように。あなたの苦しむ御心が、私たちに憐れみの心を動かし、扉を開けさせ、傷つき、見捨てられた人類の世話にあたらせますように。

 聖なる神の御母よ、あなたが十字架の下におられた時、イエスはあなたのそばの弟子を見て、「御覧なさい、あなたの子です」(ヨハネ福音書19章26節)とあなたに言われました。こうしてイエスは、私たち一人ひとりをあなたに委ねられました。それから、イエスは弟子に、つまり私たち一人ひとりに、「見なさい、あなたの母です」(同19章27節)と言われました。

 御母よ、今、私たちの人生、私たちの歴史の中に、あなたをお迎えしたいと思います。今この時、疲れ切り、動揺した人類は、あなたと共に十字架の下にいます。そして、あなたに信頼し、あなたを通して、キリストに自らを奉献したい、と望んでいます。愛をもって、あなたを崇敬するウクライナの民とロシアの民は、あなたにより頼んでいます。それに対し、あなたの御心は、彼らのために、そして戦争、飢餓、不正義、貧困によって殺されたすべての人々のために鼓動しています。

 神と私たちの御母よ、私たちは、あなたの穢れなき御心に、私たち自身を、教会を、全人類を、特にロシアとウクライナを、厳かに託し、奉献いたします。私たちが信頼と愛を込めて唱えるこの祈りを聞き入れてください。戦争を止め、世界に平和を整えてください。

 あなたの御心から出た「はい」という言葉は、平和の君に歴史の扉を開きました。あなたの御心を通して、再び平和が訪れることを信じています。あなたに全人類の未来と、人々の必要と願い、世界の苦悩と希望を奉献いたします。あなたを通して、地上に神の慈しみが注がれ、平和の穏やかな鼓動が私たちの日常に再び響きますように。

 「はい」と答えた乙女よ、あなたの上に聖霊は訪れました。私たちに神の調和を再びもたらしてください。「ほとばしる希望の泉」である方、渇いた私たちの心を癒やしてください。人類をイエスに織り込んだ方、私たちを交わりを作り出す者にしてください。私たちの道を歩まれた方、平和の小径を導いてください。

アーメン。

(編集「カトリック・あい」)

*以下は、3月24日発表の日本カトリック中央協議会訳

ロシアとウクライナをマリアの汚れなきみ心に奉献する祈り

 神の母、わたしたちの母マリアよ、この苦難の時、あなたにより頼みます。母であるあなたは、わたしたちを愛し、わたしたちのことをご存じです。わたしたちが心に抱くことは、何一つあなたに隠されていません。いつくしみ深い母よ、わたしたちはあなたの優しい計らいと、平和をもたらすあなたの存在をたびたび経験してきました。あなたはいつも、わたしたちを平和の君であるイエスのもとに導いてくださるからです。

 しかし、わたしたちは平和の道を見失いました。わたしたちは前の世紀の悲劇の教訓を忘れ、世界大戦の犠牲となった数えきれないほどの死者のことを忘れてしまいました。国際的な共同体として交わした約束を無視し、人々の平和への夢と若者たちの希望を裏切りました。わたしたちは欲望に取りつかれ、国益の中に閉じこもり、心は無関心によって渇き、利己主義によって麻痺してしまいました。神を無視し、偽りとともに生き、攻撃する心をかき立て、いのちを消し去り、武器を蓄えることを選び、隣人と共通の家を守るべき者であることを忘れてしまいました。戦争によって地球の庭を荒廃させ、わたしたちが兄弟姉妹として生きることを望まれる御父のみ心を、罪によって傷つけてしまいました。わたしたちは、自分以外のすべての人や物事に無関心になってしまいました。そして、恥ずかしながらこう叫びます。「主よ、おゆるしください!」

 聖なる母よ、悲惨な罪の中で、疲れと弱さの中で、悪と戦争という理解しがたい不条理の中で、神はわたしたちを見捨てることなく、愛のまなざしを注ぎ続け、わたしたちをゆるし、再び立ち上がらせようと望んでおられることを、あなたは思い出させてくださいます。神はあなたをわたしたちにお与えになり、あなたの汚れなきみ心を教会と人類のよりどころとしてくださいました。神の恵みによって、あなたはわたしたちとともにいて、歴史の最も厳しい曲がり角においてもわたしたちを優しく導いてくださいます。

 わたしたちはあなたにより頼み、あなたのみ心の扉をたたきます。あなたは、愛する子であるわたしたちをいつも見守り、回心へと招いてくださいます。この暗闇の時、わたしたちを救い、慰めに来てください。わたしたち一人ひとりに繰り返し語ってください。「あなたの母であるわたしが、ここにいないことがありましょうか」と。あなたは、わたしたちの心と時代のもつれを解くことがおできになります。わたしたちはあなたに信頼を寄せています。とくに試練の時、あなたはわたしたちの願いを軽んじることなく、助けに来てくださると確信しています。

 ガリラヤのカナで、あなたはイエスの執り成しを促し、イエスの最初のしるしを世界にもたらしてくださいました。婚宴の祝いが悲しみに変わった時、あなたはイエスに、「ぶどう酒がなくなりました」(ヨハネ2・3)と言われました。御母よ、神にそのことばをもう一度繰り返してください。今日、わたしたちに希望のぶどう酒はなくなり、喜びは消え去り、きょうだい愛は水を差されてしまったからです。わたしたちは人間性を見失い、平和を壊してしまいました。あらゆる暴力と破壊を可能にしてしまいました。わたしたちは、あなたの母なる助けを直ちに必要としています。

母マリアよ、わたしたちの願いを聞き入れてください。
海の星であるマリアよ、戦争の嵐の中でわたしたちを難破させないでください。
新しい契約の櫃であるマリアよ、和解への計画と歩みを奮い立たせてください。
「天の大地」1であるマリアよ、神の調和を世界にもたらしてください。
憎しみを消し、復讐をしずめ、ゆるしを教えてください。
わたしたちを戦争から解放し、核の脅威から世界を守ってください。
ロザリオの元后、祈り愛することが必要であることを呼び覚ましてください。
人類家族の元后、人々にきょうだい愛の道を示してください。
平和の元后、世界に平和をお与えください。

 わたしたちの母よ、あなたの嘆きが、わたしたちの頑な心を動かしますように。あなたがわたしたちのために流した涙が、憎しみで涸れる谷に再び花を咲かせますように。武器の音が鳴りやまない中で、あなたの祈りがわたしたちを平和に向かわせますように。あなたの母なる手が、度重なる爆撃によって苦しみ、逃げまどう人々に優しく触れますように。あなたの母なる抱擁が、家と祖国を追われた人々に慰めを与えますように。あなたの苦しむみ心が、わたしたちのあわれみの心を動かし、扉を開き、傷つき見捨てられた人々のために尽くす者となりますように。

 聖なる神の母よ、あなたが十字架の下におられたとき、イエスはあなたのそばにいる弟子を見て、「御覧なさい。あなたの子です」(ヨハネ19・26)と言われました。こうしてイエスは、わたしたち一人ひとりをあなたにゆだねられました。そして、イエスは弟子に、すなわちわたしたち一人ひとりに、「見なさい。あなたの母です」(同19・27)と言われました。御母よ、わたしたちは今、あなたをわたしたちの人生と歴史の中にお迎えしたいと願っています。今この時、疲れ果て、動揺した人類は、あなたとともに十字架の下に立っています。そして、あなたに信頼し、あなたを通してキリストに自らを奉献したいと望んでいます。愛をもってあなたを崇敬するウクライナとロシアの民は、あなたにより頼んでいます。あなたのみ心は、彼らのために、そして戦争、飢餓、不正義、貧困によって殺されたすべての人のために鼓動しています。

 神の母、わたしたちの母よ、あなたの汚れなきみ心に、わたしたち自身を、教会を、全人類を、とくにロシアとウクライナを厳かにゆだね、奉献いたします。わたしたちが信頼と愛を込めて唱えるこの祈りを聞き入れてください。戦争を終わらせ、世界に平和をもたらしてください。あなたのみ心からあふれ出た「はい」ということばは、歴史の扉を平和の君に開きました。あなたのみ心を通して、再び平和が訪れると信じています。あなたに全人類の未来と、人々の必要と期待、世界の苦悩と希望を奉献いたします。

 あなたを通して、神のいつくしみが地上に注がれ、平和の穏やかな鼓動がわたしたちの 日常に再び響きますように。「はい」と答えたおとめよ、聖霊はあなたの上にくだりました。わたしたちの間に神の調和を再びもたらしてください。「ほとばしる希望の泉」であるマリアよ、渇いたわたしたちの心を潤してください。人類をイエスに織り込んだマリアよ、わたしたちを、交わりを作り出す者としてください。わたしたちの道を歩まれたマリアよ、平和の道へと導いてください。アーメン。

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2022年3月24日