☩「愛に根差した真理に従い、心を込めて話す」ー5月の「世界広報の日」に向けてメッセージ

(2023.1.24 バチカン放送)

 教皇フランシスコが24日、カトリック教会の「第57回世界広報の日」に向けたメッセージを発表された。「世界広報の日」は、様々な形のメディアを通して行う福音宣教について、教会全体で考え、祈ることを目的とするもので、毎年、聖霊降臨の前週の日曜日、今年は5月21日に、日本の教会では復活節第6主日(5月14日)に行われるが、教皇のメッセージは、毎年、ジャーナリストの保護者、聖フランシスコ・サレジオ司教教会博士の記念日である1月24日に発表されることになっている。

 これまでの「来て、見なさい」、「心の耳で聴く」などのテーマに続き、今回のメッセージで、教皇は「『愛に根差した真理に従い』心を込めて話す(エフェソの信徒への手紙4章15節参照)」(仮訳)を選ばれた。そして、「行く、見る、聞くように、私たちを動かすのは心。心が、開かれた受容的なコミュニケーションを行わせます」とされ、「耳を傾けること」を学んだ後、「対話と分かち合い」を発展させた「心のこもったコミュニケーション」「愛に根差す真理に従った会話」を学ぶよう促された。

 また、「イエスは、『木はそれぞれ、その結ぶ実によって分かる』(参照 ルカ福音書6章44節参照)、『善い人は良い物を入れた心の倉から良い物を出し、悪い人は悪い物を入れた倉から悪い物を出す。人の口は、心からあふれ出ることを語る』(同45節)と語っている」とされ、「ですから、私たちが『愛に根差した真理』に従って語るためには、自らの心を清める必要があります。純粋な心で聞き、話してこそ、私たちは外見の奥にあるものを見、混乱した騒音を克服することができるのです」と説かれた。

*心を込めて伝える

 さらに、「『心を込めて伝える』とは、読む人、聞く人に、今日の人々の喜びや恐れ、希望や苦しみに対する私たちの分かち合いを理解してもらうこと。そのように話す人は、相手を大切に思い、その自由を尊重します」と語られた。このようなコミュニケーションのために、イエスが十字架上の死を遂げた後、エマオへ向かう弟子たちに話しかけた不思議な「旅人」を模範として示され、「復活されたイエスは、悲しみにくれるむ弟子たちに、尊重をもって歩調を合わせながら、心を込めて話しかけられます。弟子たちは、その『旅人』との会話で『心が燃える』( ルカ福音書24章23節)のを感じたのです」とされた。

 そして「分極化や対立の構図が目立つ今の時代に、教会共同体もその影響を受けていないとはいえません。そうした中で『心から』『両腕を広げた』コミュニケーションの努力は、情報にたずさわる方々だけでなく、すべての人の責任でもあります。私たち皆が、真理を語り、それを愛をもって行うよう求められているのです」と強調された。

*よく話すためには、よく愛するだけで十分

 また教皇は、「心を込めて話す」ことの最も輝ける模範を示した人として、帰天400年を迎えた聖フランシスコ・サレジオ司教・教会博士を挙げられ、この聖人の「柔和で、人間性にあふれ、反対者をも含むすべての人と忍耐強く対話する姿勢は、神の慈しみの愛のすばらしい証しとなった」ことを思い起こされた。

 「心は心に語る」という同聖人の言葉は、世代を超えた多くの人に影響を与え、その一人、ジョン・ヘンリー・ニューマンは、この言葉をモットーに選んだ。教皇は、このメッセージで、ニューマンの「よく話すためには、よく愛するだけで十分である」という言葉を引用されている。

 教皇は、聖フランシスコ・サレジオの「私たちが伝えるのは、私たちそのものだ」という言葉に触れつつ、「今日のソーシャルメディアが、『ありのままの自分』ではなく、『かくありたい自分』を伝えるために利用されている」と指摘。この「優しさの聖人」から、「真理を勇気と自由をもって語り、物々しい攻撃的な表現を用いる誘惑を退けること」を学ぶよう勧められた。

*共に歩む中で心を込めて話す

 続けて教皇は、「教会においても耳を傾け、また耳を傾け合うことの必要が大いにあります」とされたうえで、「心に灯をともし、心の傷に塗る香油となり、兄弟姉妹たちの歩みの光となるコミュニケーションの構築」を急務として示され、「聖霊に導かれた、親切で、同時に預言的な、第三千年期にふさわしい新しい福音宣教の在り方を見い出し得る、教会のコミュニケーション」の実現を、強く望まれた。

*平和の表現を推進し、”魂の武装”を解く

 さらに教皇は「穏やかに語る舌は骨をも砕く」という箴言の言葉(25章15節)を取り上げ、「『心を込めて話す』ことは、戦争のある所に平和の文化を推し進め、憎しみと敵意が荒れ狂う所に対話と和解の道を開くために、強く求められています」と強調。「世界的な紛争を生きる今日の厳しい状況において、対立的でないコミュニケーションを確立することが求められています」と訴えられた。

 そして、「対話に道を開き、統合的な軍縮を進め、闘争的な心理状態を解くことに努力する伝達者の必要」を説きつつ、聖ヨハネ23世の言葉ー「真の平和は、ただ相互の信頼のもとにのみ築くことが可能です」(回勅「地上に平和を」61項)を示しておられる。

(編集「カトリック・あい」)

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2023年1月26日