☩「私の”夢”は果たされた」-教皇、一般謁見でコンゴ、南スーダン訪問を振り返る

 (2023.2.8 Vatican news  Deborah Castellano Lubov)

  教皇フランシスコは8日、水曜恒例の一般謁見で、コンゴ、南スーダン両国訪問を振り返り、「両国を訪問するという夢が果たされたこと」を神に感謝された。

 まず、「長い間望んでいたこの旅を許してくださった神に感謝します」と述べられた教皇は、「資源が豊かだが、戦いの流血」に染まったコンゴの地で多くの人々と出会い、また、英国国教会のウエルビー・カンタベリー大主教、スコットランド国教会のグリーンシェルズ総会議長と共に平和の巡礼を行う中で南スーダンの人々を訪問できたことを大きな喜びとされた。教皇フランシスコ 2023年2月8日の一般謁見 バチカン・パウロ6世ホール

(2023.2.8 バチカン放送)

 教皇の講話の要旨は次のとおり。

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 先週、アフリカの2カ国、コンゴ民主共和国と南スーダンを訪問した。長く待たれたこの訪問の実現を神に感謝したいと思います。

 この2カ国への訪問は、いわば2つの「夢」でした。アフリカの緑の肺といわれる、広大なコンゴ民主共和国は、豊富な資源に恵まれながらも、終わりの見えない戦争によって流血が絶えません。一方、南スーダンへの訪問は、イングランド国教会のジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教、スコットランド国教会の総会議長イアン・グリーンシェルズ牧師と共に、「平和の巡礼」として行われました。この訪問は、イエス・キリストへの信仰を分かち合う者たちの、多様性における協力を証しするためでした。

 前半の3日間は、コンゴ民主共和国の首都キンシャサに滞在した。到着後、大統領官邸での会見の際、同国に向けたメッセージで、コンゴ民主共和国をダイヤモンドにたとえました。その自然、資源、そして何よりもその人々ゆえにです。しかし、この”ダイヤモンド”は対立と暴力を生み、矛盾したことに、人々を貧しくしています。

 これはアフリカの他の地域、アフリカ大陸一般においても見られること。この大陸は植民地化され、搾取され、奪われています。

 これらの現状を前に、私は2つの言葉を使いました。一つはネガティブな言葉、「やめなさい」という言葉。「これ以上アフリカを搾取するのをやめなさい」と他の集いでも述べました。これに対して、もう一つはポジティブな言葉、「一緒に」という言葉。尊厳と、相互の尊重をもって、キリストの名のもとに「一緒に」前に進もう、ということをアピールしました。

 キンシャサで、キリストの名のもとに多くの参加者が集い、ミサを捧げました。

 このほか、キンシャサでは、様々な出会いがありました。まず、コンゴ民主共和国東部の暴力の被害者との出会い。同地域は経済的・政治的な利害に影響された武装勢力同士の争いで引き裂かれています。私は今回、ゴマには行けませんでした。これらの地域の人々は恐れと不安の中にあり、不法な取引の犠牲となっています。女性をはじめ、何人かの犠牲者の証言に耳を傾けましたが、それは非常に動揺させるものでした。被害者の方々と共に、「暴力」と「あきらめ」に「ノー」と言い、「和解」と「希望」に対する「イエス」を呼びかけました。

 コンゴ民主共和国東部で活動するいくつかの慈善事業の代表者らとの出会いで、人々に感謝し、励ましました。貧しい人たちと共にある彼らの仕事は、目立たないものですが、毎日、共通善を育てています。

 コンゴ民主共和国の若者たちとカテキスタとの集いは、熱気にあふれるものでした。福音の喜びに活気づけられた若い信者たちの刷新の力は、どれほどすばらしいものでしょう。私は若者たちに「祈り」「共同体」「誠実さ」「赦し」「奉仕」という5つの道を示しました。平和と正義を願う彼らの叫びが主に届きますように。

 キンシャサのカテドラルで、司祭、助祭、修道者、神学生らと出会った。彼らの数は多く、また皆若い人たちである。なぜなら同国では召命が豊かだからである。これは神の恵みである。わたしは彼らにキリストの愛の証し人として、人々に奉仕する者となるよう励ました。

 コンゴ民主共和国訪問で、最後に司教たちと集い、彼らと司牧の喜びと苦労を分かち合いました。

 アフリカ2カ国訪問の後半、南スーダンの首都ジュバを訪れました。南スーダンは2011年に誕生した国です。

 この訪問は、「すべての人を一つにしてください」(ヨハネ福音書17章21節参照)というイエスの祈りをモットーに掲げ、この地域に歴史的に存在してきたイングランド国教会とスコットランド国教会の指導者と共に、「平和のエキュメニカル巡礼」としていたしました。

 この訪問は、紛争を乗り越え平和を築くために、2019年、南スーダンの政治リーダーたちと共に、バチカンで行われた黙想会から続く歩みの、一つの到達点でした。残念ながら、和解プロセスははかばかしい進展をみせていません。誕生したばかりの南スーダンは、権力や敵対の古い論理の犠牲となり、それが戦争や、暴力、難民や、国内避難民の原因となっています。「汚職」と「武器取引」に「ノー」と言い、「出会い」と「対話」に「イエス」と言うための、容易でない道のりを管理する大統領の尽力に深く感謝したいと思います。

 南スーダン訪問のエキュメニカルな性格は、特にイングランド国教会とスコットランド国教会の兄弟たちとの祈りの集いで表されました。共に神の御言葉に耳を傾け、共に祈ることは、対立が際立つ同国の状況の中で、重要なしるしとなりました。

 南スーダンは約1千万人の人口のうち、200万人が武力紛争のために国内避難民となり、この他の多くの人が近隣国に避難しています。私は国内避難民たちと会い、彼らに耳を傾け、教会の寄り添いを伝え、避難民たち皆が、暴力のない、和解した、平和的な新しい南スーダンの種となるように、激励しました。

 司牧者と奉献生活者との出会いでは、モーセを、神への従順と、忍耐、とりなしの模範として示しました。

 南スーダン訪問、また今回のアフリカ2カ国訪問の最後の公式行事としてミサを捧げ、説教では福音書の言葉を用いながら、多くの試練にあるこの国の「塩と光」となるよう人々に呼びかけました。神は御自身の希望を、力ある者たちではなく、小さき者、謙遜な者たちの中に置かれます。

 コンゴ民主共和国、南スーダン、そしてアフリカ全土に、愛と正義と平和の王国の種が芽吹くように祈りましょう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2023年2月8日