☩「司祭の独身制は”当座の処方箋”」-教皇、在位10周年を前にアルゼンチンのメディアと会見

Pope Francis' interview to InfobaePope Francis’ interview to Infobae 

(2023.3.10 Vatican News   Salvatore Cernuzio)

 教皇フランシスコが、3月19日の教皇着座 10 周年を前に、母国アルゼンチンのウェブサイト Infobae のインタビューに応じ、ロシアによるウクライナ軍事侵略の継続、ベネズエラやニカラグアの状況、司祭独身制、女性の教会における役割などの質問に答えられた。

 

*ニカラグアの現状は「残虐な独裁」

 ニカラグアでは、独裁体制の様相を強めるオルテガ大統領の下で、カトリック教会が絶え間ない攻撃にさらされ、政権を批判したアルバレス司教が懲役26年の刑に処せられるなど危機的状況が続いている。教皇はこの現状を「共産主義独裁政権やヒトラー独裁政権を持ち込んでいるような状態。これらは皆、残虐な独裁-アルゼンチンの言葉で言えば”guarangas (粗暴)”です」と強く批判された。

 また、政治的混乱と経済危機が続くベネズエラについて、体制が変わることへの希望を示された。

 

*アルゼンチン訪問の可能性

 母国アルゼンチン訪問の可能性については、 「訪問は、2017年12月に計画されていました。まず12月にチリに行き、翌年1月にアルゼンチンとウルグアイに行く計画でしたが、 その後、チリとペルーを訪問し、アルゼンチンとウルグアイは後で… ということになった。ですから、アルゼンチン訪問を拒むことはない。訪問の機会を待っています…私はアルゼンチンに行きたいのです」と語られた。

 

*ウクライナの和平実現は

 すでに1年を超えて続いているロシアのウクライナ軍事侵略については、「いくつかの国のリーダーたちが、(和平実現へ)動き、働いています」と期待を表明しつつ、和平の早期実現には慎重な見方を示した。

 

 

*「私たちはみな罪人です」

 同性愛者、離婚して再婚したカップル、教会での女性の役割、司祭の独身制についても、教皇は質問に答えられた。 同性愛者に対する教会の対応について聞かれた教皇は、福音書のイエスの例え話を引用され、「 すべての人。すべての人。すべての人を迎え入れる。婚宴に招かれた客が出席を断った時、主人は召使に『表の通りに出て、善い人にも、悪い人にも、老人にも、若者にも、子供たちにも、すべての人に来るように』と言いました。すべての人。教会はすべての人のためのものです。罪人たちの教会なのです」と述べられた。

 さらに、「私は、聖人たちの教会がどこにあるのか知らない。私たちは皆、罪人です」と語られ、教皇になられた2013年にリオデジャネイロを訪問された際に語られた言葉を繰り返された―「善意のある人を裁こうとする私は誰なのですか?その人が悪魔の一団の一人だとしたら、少しばかり彼を守りましょう。 しかし、今日、この問題にはとても注目が集まっています。 イエスはすべての人に呼びかけ、誰もが彼と神との関係を解決します。彼あるいは 彼女がそうできる、あるいは彼または彼女がそうしたい、そうしたいと思う時もあれば、そうできないときもありますが、主は常に待っていてくださるのです」と強調された。

 同様に、離婚して再婚したカップルに聖体の秘跡を授けること― 2014-15 年の家庭をテーマとした世界代表司教会議の中心課題だった―について、「司教の良心」を思い起こされ、カップルに「自分たちの司教のところに行き、 自分たちの状況を説明するように」と勧められた。

*「男性と女性は互いに補完し合うものだ」

 教会における女性の役割について、教皇は「教会で働く女性が増えている」という事実を強調され、「”男性優位主義”は悪いことであり、こうした傾向は歓迎すべきことです」と指摘。

 そして、 「時として、独身制が男性優位主義につながることもある。女性との接し方を知らない司祭には何かが欠けており、成熟していません。バチカンは非常に男性優位でしたが、それは”文化”の一部であり、誰のせいでもありません。これは常に行われてきましたが、 今、状況は変わりつつあります」とされ、 「女性には、男性と異なる時の感覚、待つ感覚、忍耐力があります。男性を軽視しているわけではない。男性と女性は、互いを補完せねばなりません」と強調された。

*ローマ・カトリック教会の司祭独身制は不変ではない、”修正”可能

 

 また、ローマ・カトリック教会における司祭の独身制について、教皇は、「これは当座の”処方箋”であり、司祭叙階のように不変のものではありません…  独身制は”規律”です」とされた。そして、 「それなら、”修正”は可能ですか?」との問いに、 「はい」と答えされた。

 

 

*教会内の分裂

 スペインのフリアン・ヘランツ枢機卿(92)の言葉を引用し、「『自身が協力した 6 人の教皇のうち、おそらくパウロ 6 世とフランシスコの 2 人と悪魔が協力し、教会を分裂させ、福音を広げるのを妨げてきた』と言う枢機卿がいますが」との質問者の問いには、「私には、それが真実かどうかは判断できません」とされたうえ、 「時には、悪い種類の抵抗があります。”良い抵抗”ではありません。なぜなら、私が良い計画を実行する場合、注意が払われ、議論されるのが、”良い抵抗”だからです。ここで言う”悪い抵抗”とは、裏切るために後戻りすることです。しかし、私は無警戒なのか、それとも耳を傾けないのか、どちらかです。教会にはそのようなことがある。教会の隅に、隠されています」と語られた。

 さらに、「私たちが分裂の瀬戸際に立たされたら、それは悪いことでしょう… 例えば、教皇大使を務めた非常に高名な米国人の司教。彼がカトリックかどうかは分かりません。そうかどうかの瀬戸際にいます。 抵抗はうまく扱われない。 教会では、最初から抵抗が存在したのです」とされ、「彼らが正面から私を批判するとき、私はそのことを感謝します。時として私はそれを好まないことがありますが、感謝しています」と述べられた。

 

 

*テレビなし!

 最後に、33 年前にカルメルの聖母に対してなされた「テレビを見ない」という誓いについて聞かれた教皇は、「 それは 1990 年 7 月 15 日のことでした。教会の人々と一緒にテレビを見ている時、心臓に良くないことが放送されました。テレビを見るのは、罪深いことではありませんが、心臓にいいことではない。 それで翌日、カルメルの聖母に捧げるミサで、『何の問題もなく、テレビを見るべきではない』と感じました。 それで、いくつか譲歩をする以外は、もう十分なのです」と答えられた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年3月11日