☩「”populism”を排し”popularism”の政治を」ー”人々に根差した政治”国際会議に

教皇フランシスコ「人民に根差した政治」テーマの国際会議にメッセージ教皇フランシスコ「人々に根差した政治」テーマの国際会議にメッセージ 

 教皇フランシスコは15日、ロンドンの「神学と共同体社会のためのセンター」が主催する「人々に根差した政治」をテーマにした国際会議にビデオメッセージをおくられた。

 会議では、特に市民運動やそれを支える民間団体の活動を「見る」「識別する」「行動する」の三つの視点から捉え、意見交換が行われた。

 メッセージで教皇は、「土地・家・仕事」をめぐる闘いで人々に寄り添う市民運動を進めている関係者たちに挨拶をおくり、「特に現在の、新型コロナウイルスの世界的大感染を原因とする貧困と失業問題は、皆さんの事業と証しを切迫した形で求めている」と話された。

 そして、この会議は、現代の「populism(大衆迎合主義)」の蔓延に対する答えが「個人主義にではなく、人々の生活に根差した、兄弟愛の政治」にあることを示している、と指摘。

 「すべての人に『尊厳のある生活』と『美徳と新たな連帯を育む生活』を保証するメカニズムを生む政治を『popularism』と呼びたい。それは人々の為はもとより、人々と共にある、奉仕としての政治です」と強調され、「populism」は、意識的、あるいは無意識的に、すべてを人々のためと言いながらも、彼らが不在になる傾向があり、その結果、populism的ビジョンでは、人々が自分自身の運命を担う主役ではなく、一つのイデオロギーの負債者になってしまう、と指摘された。

 教皇は昨年秋に発表された新回勅「Fratelli Tutti(兄弟の皆さん)の第5章で「より良い政治」とは、「共通善に奉仕し、市民の重要さを認識し、対話に臨むことで、愛(カリタス)をより貴重な形で表すことにある」とし、これを「popularism」と規定、それは「people(人々)」ではなく自らのために彼らを惹きつけて利用する「populism」と一線を画するもの、と強調しており、このメッセージは新回勅を基にされたものだ。

 そして、教会の果たすべき役割に関して、「教会にとって、人々の精神的価値と文化から社会正義の推進を切り離すことは、不可能」とされ、それは、「キリスト教共同体で、これらの価値は、『希望を失い、道に迷う人々』を探し求めるイエス・キリストとの出会いから生まれるからです」と語られた。

 教皇は、市民運動を見守りつつ働く司牧者たちに対して、時には「政治的すぎる」と言われ、またある時には「宗教を押し付ける」と言われる難しい立場に理解を示され、「民の司牧者、宗教的司牧者は、勇気をもって、民の前を、中を、後ろを歩くべきです… 前を歩くのは、人々に道を示すため、中を歩くのは、人々に耳を傾けるため、後ろを歩くのは、遅れた人たちを助けるためなのです」と励まされた。

(編集「カトリック・あい」)

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2021年4月16日