☩「コロナ禍で貧困対策、雇用対策は急務」ー教皇、「貧しい人のための世界祈願日」に向けて

カリタス・ローマ運営の複合支援施設を訪れた教皇フランシスコ 2019年11月カリタス・ローマ運営の複合支援施設を訪れた教皇フランシスコ 2019年11月  (Vatican Media)

 教皇フランシスコは14日、カトリック教会の2021年度「貧しい人のための世界祈願日」(11月14日)に先立つメッセージを発表された。

 今年で第5回目を迎える同祈願日のテーマは「貧しい人々は、いつもあなたがたと一緒にいる」(マルコ福音書14章7節)。

 メッセージで教皇は「貧しい人々は、あらゆる状況・場所において、私たちを福音化する。なぜなら、これらの人々は、御父の最も純粋な御顔を常に新しい方法で再発見させてくれるからです」とされ、「新しい福音宣教は、貧しい人々の救いの力としての存在を認め、それを教会の中心に据え、彼らの中にキリストを見出すように、と私たちに求めています」と訴えられた。

 さらに、「私たちの貧しい人々に対する寄り添いは、単なる行動や支援計画から成り立つのではなく、何よりもそれぞれの人を唯一の存在として認める『他者への関心』から出発する必要があります… この愛ある関心から、その人の善を願う真の配慮が生まれるのです」と説かれた。

 そして「イエスは貧しい人々の側にいるだけでなく、彼らと同じ境遇を分かち合いました… 『貧しい人々は、いつもあなたがたと共にいる』というイエスの言葉には、『貧しい人々はいつも私たちの間にいるのだから』と関心を払わないのではなく、これらの人々の中に積極的に入っていくように、との勧めが込められています」と強調。「貧しい人々は共同体の外にある存在ではなく、苦しみを分かち合い、その困難や疎外感を和らげるべき兄弟姉妹です。”慈善の行為”は、恩恵を与える人とそれを受ける人の関係を生むだけですが、”分かち合い”は兄弟愛を生みます」と指摘された。

 倫理的・社会的混乱が常に新たな貧困の形を生み、これに加えて、現在も続いている新型コロナウイルスの世界的大感染が貧しい人々をさらに増加させたことを憂慮され、特にいくつかの国々で、コロナ感染が与えた影響は深刻で、人々は最低限の生活もできなくなっています。世界全体でコロナ感染阻止に闘うだけでなく、「雇用問題への対応は急務」とされた。

 現在の世界の貧困問題について、教皇は、個人中心の生活スタイルが貧困の形成に関係していること、貧困の責任をすべて当人たちに帰す傾向があること、を指摘。「貧困は運命のなす業ではなく、人々のエゴイズムの結果です」と語られ、すべての人の能力を活かす発展プロセスの必要を指摘するとともに、「貧しい人々が、常に”受け取るだけの側”であってはならない」として、彼らが自らの能力を引き出せる環境を整えることの重要性を強調された。

 また、教皇は、「貧しい人々は分かち合いの模範。私たちに連帯と分かち合いを教えてくれる存在」とされ、イエスの「貧しい人々は、いつもあなたがたと一緒にいる」(マルコ1福音書14章7節)という言葉は、「善を行う機会を見逃してはならない」という呼びかけだ、と説かれた。

 最後に、教皇は、今回が5回目となる「貧しい人のための世界祈願日」を世界各地の教会に根付かせ、貧しい人々との出会いを通して福音宣教活動を広げるように、と願われ、世界の信徒たちに、「貧しい人たちが扉をたたくのを待たないで、私たちの方から出かけて行きましょう」と呼びかけられた。

(編集「カトリック・あい」)

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2021年6月16日