☩「『人身売買で儲ける経済』を『人をいたわる経済』に変えよう」国連人身取引反対世界デーに

World Day Against Trafficking in PersonsWorld Day Against Trafficking in Persons  (©yupachingping – stock.adobe.com)

(2021.7.30 Vatican News staff reporter)

 国連の「人身取引反対世界デー」(7月30日)にあたって、教皇フランシスコは30日、ご自身のツイッターで、世界の指導者たち、宗教指導者たちと連携して、人身売買撲滅を改めて訴えられた。

 教皇はこれまでも、世界で2000万人から4000万人に上るとされる人身売買を「人道に反する罪」と繰り返し非難されてきた。30日の世界デーにあたって、ツイッターで「『人身売買(で儲ける)経済』を『人をいたわる経済』に変えるため、人身売買の犠牲になった方々と一緒になって働きましょう」と世界の人々に呼びかけられた。

 世界のカトリック修道会などで作っている、人身売買撲滅のネットワーク「Talitha Kum」の国際コーディネーターであるCMS(英国教会伝道協会)のシスター・ガブリエラ・ボッタニは、Vatican Radioの取材に応じ、「人身取引反対世界デー」は「特に、アジア地域、特に南アジアと東南アジアにとって重要な日。この地域の若い人たちが私たちと連携し、活動の中心となって働いてくれることになったからです」と語った。

 「Talitha Kum」現在、世界の人身売買による被害者1万7000人のケアをし、安全な住いの提供、教育と雇用の機会の創出、司法当局への被害の訴え、補償などを受けるための支援、心身両面からの医療の提供などを進めている。さらに強化、拡大しようと、このほど#CareAgainstTraffickingというタイトルのキャンペーンを始めたばかりだが、アジアでのこうした動きは、その成果とも言える。

 シスターはまた、人身売買撲滅の戦いにおける「声を上げる」ことの重要性についても語った。「ソーシャル・メディアが普及し、”バーチャル(仮想現実)”に慣れてしまっている現代社会で、私たちは改めて『現実』の重要性を感じています。現実は、苦しく、痛みを伴いますが、希望に満ちたものでもあります。特に若い人たちは、被害者の『現実』の声を聞いて、そこから、苦しみを希望に変える取り組みの必要に気付くことが出来ればと思います」。

 今年の「国連人身売買反対世界デー」のテーマは、「被害者の声が先導する」だ。国連のアントニオ・グチエレス事務総長はメッセージの中で、その主旨を「人身売買と防止し、被害者を助け、心身のケア、社会復帰を支援するための効果的な対策を隔離するうえで、被害者たちが果たす重要な役割に焦点を当て、その闘いにおける主要な登場人物になってもらうこと」と説明。

 さらに、「人身売買の被害者の多くは、その被害についての人々の無知や誤解に苦しんだ経験をもっている。被害を訴えても、被害を確定する前の警察や司法関係者による取り調べで、さらに心的外傷を経験することが多い。人身売買業者によって強制された行為で処罰されたり、侮辱されたり、十分な助けを得られなかったりするケースもある」とし、「このような被害者の経験から学び、彼らの提案を具体的な行動に変えることは、人身売買と闘う上で、被害者中心の効果的なアプローチにつながる」と述べた。

 また、「新型コロナウイルスの世界的大感染の影響で、世界の貧困人口が以前よりもさらに1億2400万人も増えており、人身売買の被害者をさらに何百万人も増やす結果になっている。そのの多くが未成年の子供たちだ」と強調し、世界各国が、このような悲劇が繰り返されないために行動を起こすように訴えた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年7月31日