◎教皇・新連続講話「老年の意味と価値について」①「世代間連携の必要性を再確認しよう」

Pope Francis at the General AudiencePope Francis at the General Audience  (Vatican Media)

 

*人生のすべての段階の人々の一致

 そして、教皇は「移民・難民問題と並んで、高齢者の問題、今、人類家族が直面している最も緊急の問題の1つです… (高齢者の増加は)単なる『量的変化』の問題ではなく、『人生のさまざまな段階にある人々の一致が危機に瀕している』ことを意味するのです」と指摘。「ですから、人生全体として理解し、正当に評価することの重要性、そして人生のさまざまな段階にある人々の間の友情と協力の必要性か。それとも、または分離と廃棄か。どちらが優先されるのでしょう」と問いかけられた。。

 さらに、「今日の社会では、子供、若者、大人、そして同居している高齢者の割合が変化している。高齢者が大勢になり、人間世界の大きな部分を占め、子供たちは少ししか授からなくなっています」とされ、「この不均衡は多くの問題を生んでいます。今日の支配的文化が唯一のモデルとしているのは、常に若いままでいる独立独行の個人です。 人間の理想を具現化するのにふさわしい唯一の年齢としての若さへの称賛は、虚弱で、衰亡し、障害としての老年への蔑視と相まって、20世紀の全体主義の支配的なイメージとなってきました。そのことを忘れてはなりません」と警告された。

 

*人生と共同体社会の感覚

 85歳の教皇は、「現代の人々が長寿になってきているという事実は、個人、家族、社会の歴史に構造的な影響を及ぼしている。しかし、私たちは人生の精神的な質と共同体の感覚がこれに対応しているかどうか、自問する必要があります」と指摘。

 そのうえで、「高齢者は『長生きしていること』を謝罪する必要があるでしょうか。それとも『すべての人の人生の意味に貢献した』ことを光栄に思うべきでしょうか?」と問われた教皇は、「残念ながら、いわゆる”進化した文化”では、人生の意味とはほとんど関係がないようです。老後の人生には特別な内容がないものと見なされ、高齢であること自体が生きる意味もないためです。そのうえ、人々は年を取ることを奨励されておらず、高齢者の存在を認識するための教育が共同体社会において不足しています」とされ、さらに、「老年は共同体社会の決定的な部分であり、傷害の期間の3分の1にまで及びますが、時として、高齢者のケアプランはあっても、存在することについてのプロジェクトはない。これは人々の思考能力、想像力、創造性の欠如を示しています」と批判された。

 

*失われた世代間連携を取り戻せ

 また教皇は「若者は美しいですが、『永遠の若者』は非常に危険な幻想です」と警告。 「年をとることは、若いことと同じくらい重要であり、美しいことだ、ということを覚えておく必要があります。すべての年齢の人生を人間らしい水準に戻す『世代間の連携』は、私たちの『失われた贈り物』です。もう一度見つけなければなりません」と訴えられた。

 

*世代間連携についての神の言葉に倣って

 世代間連携について、教皇は「神の言葉は多くのことを語っています」とされ、「若者は幻を見、老人は夢を見る」(使徒言行録2章17節参照)と預言者ヨエルを通して言われた神の言葉に注目され、「年配者が霊に抵抗して、過去に彼らの夢を埋めてしまえば、若者はもはや夢を見ることができなくなります。未来を開くためにせねばならないことを考えてください。高齢者が若者に自分たちの夢を伝える時、若者は自分たちがせねばならないことをはっきりと認識します。高齢者の夢がなければ、若者は現在を運び、未来を支えるのに苦労するでしょう」と説かれた。

 そして、 「祖父母が憂鬱に陥れば、若者はスマートフォンに、さらに目を向けることになる。彼らの人生はあっという間に死んでしまいます。この意味で、若者の幻滅は、おそらくシンガ徒コロナウイルスの大感染がもたらした最も深刻な影響です。高齢者は、すでに生きた『命の資源』を持っており、若者たちはそれに頼ることができます。高齢者たちは、若者たちが視力を失うのを黙って見ているでしょうか。それとも自分たちの夢を温めることで、若者たちと共に歩もうとするのでしょうか?」と問いかけられた。

 最後に教皇は、「老後の別れを伴う長い旅の知恵は、人生の意味を捧げ物として生きることです。老後の人生が人にふさわしい尊厳を取り戻さなければ、すべての人の愛を奪う落胆で自分自身を締めくくる運命にあるのです」と警告されたうえで、「老後に関するこれからの私の講話で、すべての方々に、高齢者が人生の他の段階にある人々にもたらす贈り物に、自分の思いや愛情を投資するよう、促すことにしたいと思います」と締めくくられた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年2月23日