Pope Leo XIV meets with political leaders during the Jubilee of Governments on June 21, 2025 (@Vatican Media)
(2025,6,21 Vatican News Deborah Castellano Lubov)
21、22の両日、バチカンとローマで世界の68か国の国会議員が参加する「政治家の聖年」の行事が催されているが、教皇レオ14世は初日の21日、「政治家の聖年」の参加者らとお会いになり、挨拶で、 16世紀の英国の大法官、聖トマスモアを政治家の模範として取り上げ、「彼は、真理を裏切ることなく、自らの命を犠牲にする覚悟によって示した勇気によって、自由と良心の優位のために殉教しました」と述べられた。
挨拶で教皇はまず、政治は 「最高の慈善の形 」と定義されるもの、とされ、「政治活動を社会と共通善に提供する奉仕を考えるなら、真にキリスト教の愛の行為として見ることができます」、そして、「それは決して単なる理論ではなく、私たち人間家族の善に対する神の絶え間ない関心の具体的なしるしであり、あかしです」と強調された。
続けて教皇は、現在の世界の社会・文化的状況において重要と思われることとして3点を指摘された。
*共同体の利益を促進し、保護する
第一に、特別な利益とは無関係に、特に社会的弱者や社会から疎外された人々を擁護することで、共同体の利益を促進し、保護する責任があること。「これには、少数の人々の手に集中している莫大な富と、世界の貧しい人々との間の容認しがたい不均衡を克服するための活動が含まれます。この不均衡は、不公正が続く状況を生み出し、暴力につながりやすく、遅かれ早かれ戦争という悲劇につながる。これに対して、健全な政治は、資源の公平な配分を促進することによって、国内的にも国際的にも調和と平和に効果的な奉仕を提供することができるのです 」と説かれた。
*信教の自由と宗教間対話
そして第二に、信教の自由と宗教間対話に関するもの。教皇は「真の信教の自由があり、異なる宗教共同体間の尊敬に満ちた建設的な出会いが発展するための条件を整えることによって、政治活動は多くのことを達成することができます」とされ、「神への信仰は、そこから派生する肯定的な価値とともに、個人と共同体の生活にとって、善と真理の計り知れない源です」と語られた。
*本質的な基準点としての自然法
第三に教皇は、「政治活動において共通の参照点を持ち、意思決定プロセスにおいて先験的に超越的なものを考慮することを排除しないために不可欠なのは、あらゆる時代と場所で有効であると認められ、自然そのものの中に最も妥当で説得力のある論拠を見出す自然法です」と言明。
「自然法は、他の議論の余地のある信条とは別に、またそれ以上に普遍的に有効です。立法と行動、特に個人の生活とプライバシーに関わる、今日、過去にも増してデリケートで差し迫った倫理的問題について、私たちの方向性を定める羅針盤を構成します」と述べられた。
また教皇は、1948年12月10日に国連によって承認され、宣言された世界人権宣言を「人類の文化遺産」と指摘。「この宣言は常に適切なものであり、侵すことのできない完全性において、人間を真理探究の基盤に置くことに大きく貢献することができる。自分の内面や良心の指示に尊重されていると感じられない人々に尊厳を回復させることができるのです」と強調された。
*AI(人工知能)への挑戦
さらに教皇は、AI(人工知能)の 「大きな挑戦 」と呼ばれるものに目を向けられ、「人工知能が人間のアイデンティティと尊厳、そして基本的自由を損なわないなら、これは社会にとって大きな助けとなるでしょう」とされたうえで、注意せねばならないのは、「私たちの個人的な生活は、どんなアルゴリズムよりも大きな価値があり、社会的な関係は、魂のない機械があらかじめパッケージ化できる限られたパターンをはるかに超越した発展のための空間を必要とすること」と指摘。
「何百万ものデータを保存し、多くの質問に数秒で答えることができる一方で、人工知能は人間のそれとは比較にならない 『静的記憶 』を備えていることを忘れてはなりません」と注意を促され、「政治も、このような大きな挑戦を無視することはできない。それどころか、政治は、新しいデジタル文化が提起する問題に対して、自信と懸念の両方を持って正しく目を向けている多くの市民に応えるよう求められているのです 」と強調された。
*聖トマスモアの証しと模範
挨拶の最後に教皇は、世界中の議員たちに聖トマス・モアに目を向けるよう促された。
教皇は、2000年の聖年祭において、聖ヨハネ・パウロ二世がこのイギリスの聖人を、政治指導者が尊敬すべき証人として、また彼らの仕事を保護すべき執り成し手として示したことを思い起こされ、「トマス・モア卿は市民に対して責任をはたすことに忠実な人であり、まさにその信仰ゆえに国家の完璧な奉仕者であり、政治を職業としてではなく、真理と善を広めるための使命として捉えるようになったのです。彼が真理を裏切ることなく、自分の命を犠牲にする覚悟で示した勇気は、今日の私たちにとっても、彼を自由と良心の優位のための殉教者なのです 」と強調。
このことを念頭に置きながら、「彼の模範が、あなた方一人ひとりの霊感と導きの源となりますように!」と祈られた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)