☩教皇、カザフスタンで各界代表、外交団に「ウクライナ侵略は”無意味”で”悲劇的”」と(Crux)

(202.9.13 Crux Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

*「ヨハネ・パウロ二世のカザフスタン訪問は”9.11”直後、そして私はウクライナ侵攻の最中に」

 

 演説で教皇は、カザフスタンの多様なコミュニティの調和のとれた共存を称賛され、核軍縮と環境保護への同国の積極的な対応、昨年の死刑廃止の決定を高く評価。そして、カザフスタンは地政学的に見て重要な位置にあり、「紛争の減らすために果たすべき基本的な役割」を持っていることを強調された。

 また、ヨハネ・パウロ二世教皇が2001年にカザフスタンを訪問されたのが、米国における悲劇的な9.11テロ攻撃のわずか数日後だったことを思い起され、「私は今、無意味で悲劇的なウクライナ侵略が起きている最中に訪問しています」と、歴史の皮肉を嘆かれた。

 そして、今回の訪問の目的を「グローバル化した世界の発展にとって不可欠な道である平和への、すべての人々の叫びに心を合わせる」こととされ、14日の第7回世界宗教指導者会議の意義を強調された。 この会議にはロシア正教会のキリル総主教の出席も予定され、教皇は会議の機会に、プーチン大統領と緊密な関係にある総主教と会談して侵略中止に協力を求めることを希望されていたが、総主教は直前になって欠席を表明。会談は実現できなかった。教皇は、ロシア、ウクライナ両国訪問の希望をこれまでたびたび表明されているが、ロシアと国境を接するカザフスタンはウクライナにも近い地理的な位置にある。

 教皇は演説で、「対話と出会いを促進するために外交の努力を拡大」する必要性を強調され、「今日、一人の問題はすべての人の問題であり、世界でより大きな権力を握っている人々は、他の国々、特に不安や紛争に最も陥りやすい国々に対して、より大きな責任を負っています… これは私たち自身の個人的な利益だけでなく、私たちの関心事であるべきです」と指摘。

*「今こそ「ヘルシンキの精神」を呼び起こす時だ」

 そして、今こそ「対立を激化させたり、対立するブロックを強化したりするのをやめる」時であり、「人々が相互理解と対話の中で成長できるようにする」国際レベルの指導者が緊急に求められている、とし、欧州の安全保障と協力に関する歴史的な1975年のヘルシンキ合意に言及し、「ヘルシンキの精神を呼び起こし、世界の指導者たちは多国間主義を強化し、将来の世代を見据えて、より安定した平和な世界を構築する決意を示さなければなりません。そのために必要なのは、理解、忍耐、そしてすべての人との対話です。『すべての人』とのです」と訴えられた。

 また教皇は、カザフスタンの複雑な歴史、特にソビエト連邦の一部だった時代のカザフスタンー多くの労働収容所が作られ、非常に多くの人々がそこに送り込まれ、抑圧された悲惨な歴史ーを思い起こされ、人々が耐え忍んだ膨大な苦しみの記憶が、カザフスタンの人々にとって「未来への旅の不可欠な部分」となり、「人間の尊厳、すべての男性と女性、そしてすべての民族、社会、宗教団体の尊厳を、絶対的に優先するように、あなたがたを鼓舞しているのではありませんか」と、語りかけられた。

 

*「伝統弦楽器「トンブラ」は欧州とアジアの架け橋、調和の象徴」

 

 教皇は、演説の基調を、カザフスタンの伝統的な弦楽器「ドンブラ」のイメージに合わせられ、「ドンブラの2つの弦は、欧州とアジアの架け橋としてのカザフスタンの役割を象徴しています」と語り、ドンブラが奏でる調和は、「交響的」な社会生活を合唱で成長し、成熟させることにつなげ、カザフスタンを構成する550の民族集団と80の異なる言語をまとめる役割を果たしている、とされた。

 そして、この文脈で、教皇はまた、同国の憲法で保証されている信教の自由の重要性について語り、「健全な世俗性は、宗教の重要性と不可欠な役割を認識し、それを台無しにする過激主義の形態に抵抗します… このような世俗性は、すべての人が平等に扱われるために不可欠な条件です」とされ、「信教の自由は、市民の共存のための最良のチャネルです」と語れた。

 民主主義とカザフスタン自身の民主化プロセスについても言及され、システムとしての民主主義は「権力を単に少数の人々のためだけでなく、全国民への奉仕に変換するのに、最も適した形を構成するもの」とし、カザフスタンのさらなる民主主義の追求は「議会と地方当局の能力を強化し、より一般的には、より大きな権力の分配」を目的としており、「引き返すことのできない… 時間と労力を必要とする厳しいプロセス」だと指摘された。

 

*「民主主義は、あらゆる場所で”素晴らしい言葉”以上のものでなければならない」

 さらに、「民主主義と近代化は、あらゆる場所で”素晴らしい言葉”以上のものでなければなりません。人々への具体的な奉仕に具現化されねばなりません… 人々の声に耳を傾け、彼らの正当なニーズに応えることから生まれる『良い政治』、市民社会、NGO、人権団体の絶え間ない関与、そして労働者、若者、そして最も脆弱な人々への特別な関心を払う政治です」と述べ、「このような『真の民主的な政治スタイル』は、人々の安定と福祉を脅かす過激主義、個人主義、ポピュリズムに対する、最も効果的な対応なのです」と語られた。

 また教皇は、カザフスタンの国会で昨年、死刑廃止法案が可決されたこと、環境への取り組みと核軍縮への積極的な対応について称賛された。 最後に、カザフスタンがバチカンとの外交関係樹立30周年を祝おうとしていることに言及し、カトリック教徒の願いを「この国の開放性と敬意ある対話の精神を証し続ける」ことにあると強調され、当局の歓迎に感謝し、「出会いの国、カザフスタンにふさわしい平和と統一の召命」を神が祝福してくださるように、と祈られた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年9月14日