☩教皇、「女性たちはしばしば見過ごされ、過小評価されている、その声を聴こう」新刊書の序文で

(2024.7.11 Vatican News   Salvatore Cernuzio)

 教皇フランシスコは、2 人の枢機卿と 3 人の女性神学者が執筆し、9日に出版された「Women and Ministries in the Synodal Church(シノダル(共働的)な教会における女性と聖職)」と題する本に序文を寄せられた。その中で教皇は、「女性」「聖職者」「シノダリティ(共働性)」「虐待の悲劇」など教会にとってデリケートなテーマをすべて取り上げている。

 本の執筆者は、ローマのアウグスティリウムでキリスト論とマリア論の教授を務めるサレジオ会のシスター・リンダ・ポッチャー、英国国教会の司教で事務総長のジョー・B・ウェルズ、ヴェローナ教区の教師でスピリチュアリティ講座や黙想会の主催者のジュリヴァ・ディ・ベラルディーノ氏の3人の女性と、ルクセンブルク大司教でシノドス総報告者のジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿と、バチカン弱者保護委員会の委員長を務めるショーン・パトリック・オマリー枢機卿だ。

 この本は、今年2 月 5 日に教皇が出席して行われた枢機卿顧問会議でなされた議論を基にした執筆者たちによる対話の形をとっている。本の執筆者である2人の枢機卿もメンバーの会議には、共同執筆者の3人の女性も招待され、「教会における女性の役割」というテーマで、意見を述べていた。

 シスター・ポッチャーの共著「教会の非男性化」に続くものだが、「教会の非男性化」という言葉は、教皇フランシスコが国際神学委員会のメンバーと謁見された際に初めて使われた。

*教会における聖職:重要かつ繊細なテーマ

 本の序文で教皇は、まず、在位中の重要な信条である「現実は観念よりも重要である」という”原則”から始めて、「教会における聖職」について考察され、この原則が、「教会における女性というテーマ、特に教会共同体における聖職という重要かつ繊細なテーマに関して、枢機卿顧問会議に向けたシスター・ポッチャーの指針となっていること」を評価された。

*聖職者による性的虐待が引き起こした危機と「聖職者主義」

 また、聖職者による性的虐待とそれへの高位聖職者などの対応が引き起こした危機によって、「『聖職者主義』に立ち向かう必要性が浮き彫りになった」と強調。「聖職者主義は、聖職者に限らず、教会内での権力の乱用という、より広範な問題でもあり、一般信徒や女性にも影響を及ぼしています」と指摘された。

*女性の声に耳を傾けることは、現実を直視する重要な手立て

 そのうえで、「女性の喜びや苦しみに耳を傾けることは、現実に目を向ける重要な手立ての一つです」とされ、「判断や偏見なしに女性の話を聴くことで、『多くの場所や状況で女性が苦しんでいるのは、まさに彼女たちが何者で何をしているのか、また、彼女たちに場所と機会さえあれば何ができるのか、何になれるのかが、認識されていないからだ』ということに気づきます」と語られた。

 そして「最も苦しんでいる女性は、最も身近な女性、神と神の王国に仕える準備が最も整い、最も身近な女性であることが多いことにも」と付けう加えられた。

*”観念の祭壇”で現実を犠牲にしている

 教皇はさらに、このようにして、「観念ではなく現実を見る」よう、私たちに呼びかけ、そうするのは、「教会自体が近代にしばしば陥った『罠』、つまり『観念への忠実さを、現実に注意を向けることよりも重要だと考える』という罠に陥らないようにするため」と説かれた。

 そして、「現実は常に、観念よりも偉大であり、私たちの神学が鮮明で明確な観念の罠に陥ると、必然的にProcrustean bed(画一化された強制)になり、現実の一部を”観念の祭壇”の犠牲にしてしまうのです」と強調。「ですから、この本の価値は、観念からではなく、現実に耳を傾け、教会の女性の経験の賢明な解釈から始めていること、にあります」と述べられた。

*シノドス第2会期に向けた討議要綱でも女性の役割を強調している

 女性の役割の問題は、10月に開かられる世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会第2会期に向けて出された討議要綱でも取り上げられている。女性の賜物と召命を、これまで以上に強く認識する必要性を強調し、男性と女性を”キリストの兄弟”として、教会の使命で結ばれた者として、相互依存的、相互的な見方へ思考を転換することを提唱している。

 女性の教会における役割の強化の象徴となっている女性助祭の問題について、シノドス事務総長のマリオ・グレック枢機卿は、「特定のテーマについて神学的および牧会的な考察を深めるために教皇が設立した研究グループの1つの主題となっており、第2会期の会議では取り上げられない」と述べているが、教皇は、シノドス事務局と協力して、より広い文脈で、聖職者の形態の中で、女性助祭の問題を教理省に委ねた。

 この3月に発表された研究グループに関する文書で発表されたように、この取り組みは、シノドス総会の「女性の貢献に対する認識と評価を高め、教会の生活と使命のあらゆる分野において女性に託された司牧的責任を増やす」という要望に応えることを目指している。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年7月12日