(2024,6,27 バチカン放送)
教皇フランシスコが27日、9月1日の2024年度「被造物を大切にする世界祈願日」に向けたメッセージを発表された。今年のテーマは「被造物と共に希望し、行動する」で、聖パウロが「ローマの信徒への手紙」中で、被造物と共に贖いを待ち望む、信仰を通した救いの希望について記した箇所(8章19-25節)から採られている。
カトリック教会は、毎年9月1日に「被造物を大切にする世界祈願日」を記念する。環境保護に対して関心をもつよう呼びかけ、環境を取り巻く問題についての考察と祈りを深めることが目的だ。
教皇はメッセージの中で、様々な不正義や、兄弟同士が殺し合う戦争、人間にとって不可欠な環境に対する汚染など、世の中の多くの悪を見つめる教皇は、聖パウロがアダムの原罪に暗に触れつつ、「被造物全体が今に至るまで、共に呻き、共に産みの苦しみを味わっていることを、私たちは知っています」(ローマの信徒への手紙8章22節)と述べている箇所を観想。「万物、すべての被造物は、今ある状況を乗り越え、本来あるべき姿に落ち着くことができるようにと、待ちきれずに、呻き、喘いでいます」と述べられた。
そして、「被造物自身も滅びへの隷属から解放されて、神の子どもたちの栄光の自由に入る」(同8章21節)と聖パウロが記すように、「キリストによる人間の救いは、被造物にとっても確かな希望であり、キリストの贖いにおいて、人間とその他すべての被造物との連帯の絆を希望のもとに観想することができるのです」と強調。「イエスの輝かしい再臨を希望と忍耐のうちに待つ中で、聖霊は信者の共同体を見守り、教え、環境をめぐる人的堕落に抗するための生活スタイルの回心へと招きます」とされた。
さらに、「この回心とは、他者と自然を支配しようとする者の傲慢から、他者と被造物をいたわる者の謙遜への移行に根差しています… 自分を神に代わる存在にしようとする人間は、自分自身の最大の危険となるでしょう」と警告しておられる。
また教皇は、今年の祈願日のテーマである「被造物と共に希望し行動する」は、「何よりも、すべての善意の人が力を合わせ、共に歩み、人間の力の意味とその限界を再考することに貢献すること」とされ、「人間の能力はこの数十年で増し、驚くべき技術発展を遂げましたが、それと同時に多くの生物の命と自分たち自身を危険に陥れるほどに危ない存在になったことに気づいていません… コントロール不能な能力は恐ろしい状態を生み出し、それは私たち自身を襲う可能性があります」と改めて警告。特にAI(人工知能について、その発展に「倫理的制約を設け、人間と自然の支配に用いるのではなく、平和と統合的発展に役立たせる必要」を改めて説かれた。
今年の三位一体の祝日にバチカンで開かれたカトリック教会の「第1回世界子どもの日」の大会について、「子どもたちは、神とは抽象的な概念ではなく、愛情深い御父、すべての人の贖い主にして友である御子、私たちの愛の歩みを導く聖霊であることを理解しました」と回想され、「愛の霊への従順は、人間の態度を略奪者から庭を耕す者の態度へと根本的に変えます… 大地は、人間に託されても、神のものとして残る(参照 レビ記25章23節)のであり、自然を所有・支配し、自分の好きなように変質させようと試みることは、一つの偶像崇拝の形です」と批判された。。
以上のように、教皇はこのメッセージ全体を通して、「被造物を守ることは、単なる倫理を超えた、人間の神秘と神の神秘の交わりをめぐる、何よりも神学的な問題であること」と強調されている。
(編集「カトリック・あい」=聖書の和訳は「聖書協会・共同訳」を使用)