
(2025.6.20 Vatican News Deborah Castellano Lubov)
教皇レオ14世は20日にバチカンで開かれた第2回ローマ人工知能会議にメッセージを送られ、「AI、特に生成AI(学習したデータに基づいて新しいコンテンツを生成する能力を持つ技術)は、ヘルスケアや科学的発見における研究の強化を含む、さまざまなレベルで新たな地平を切り開きました」と評価。
そのうえで、AI(人工知能)という 「人類の知恵の類まれなる産物」への対応を考える際、「人間の尊厳を決して忘れてはならず、若者や子供たちの適切な人間的・神経学的発達を妨げてはなりません」と警告された。
メッセージで教皇はまず、会議がバチカンで開かれたことについて、「これは、私たち人類家族の現在と未来に直接影響を与えるこのような議論に参加したい、という教会の明確な意思の表れ」とされたうえで、「人類家族に恩恵をもたらす並外れた可能性とともに、AIの急速な発展は、より真に公正で人間的なグローバル社会を生み出す上で、このような技術を適切に使用することに関して重大な問題も提起しています」と指摘。
*人間の天才が生み出した例外的な産物だが、道具であることに変わりはない
そして、故教皇フランシスコが言われたように、AIは「何よりも『道具』」であることを強調され、「AIのガバナンスのための適切な倫理的枠組みを議論するためには、人間固有の特徴を認識し、尊重することが欠かせません… 私たちの誰もが、子供や若者のことを心配し、AIの使用が彼らの知的・神経学的発達に及ぼす可能性について懸念しているのは確かです… 若者たちは、成熟と真の責任に向かう旅路を妨げられることなく、助けられなければなりません。社会の幸福は、若者たちが神から与えられた賜物と能力を開発し、自由で広い心をもって、時代の要求と他者の必要に応える能力を与えられるかどうか、にかかっているのです 」と訴えられた。
*どんなに広範であっても、知性と混同してはならない
続けて教皇は、「AIによって得られる情報量にこれほど素早くアクセスできる世代はかつてなかった。しかし、データへのアクセスは、それがどんなに広範なものであっても、知性と混同されてはなりません… 知性とは、必然的に 、人生の究極的な問いに対して開かれ、真と善への志向を反映するものです」と指摘。
さらに、AIがより大きな平等を促進するために肯定的かつ実に崇高な方法で使用される一方で、依然として 「他者を犠牲にして利己的な利益のために悪用される可能性、あるいはもっと悪いことに、紛争や侵略を煽るために悪用される可能性 」がある、と警告された。
*AIの影響について考える
教皇は、教会として、「人間と社会の統合的発展 に照らしてAIの影響を検討する必要性を何よりも強調することで、差し迫った問題についての穏やかで十分な情報に基づいた議論に貢献したいと願っています」とされ、「このことは、人間の幸福を物質的にだけでなく、知性的にも精神的にも配慮すること、一人ひとりの人間の侵すことのできない尊厳を守り、世界の人々の文化的、精神的な豊かさと多様性を尊重することを意味します」と言明。
「最終的に、AIの利益やリスクは、この優れた倫理的基準に従って正確に評価されなければなりません… 今日の社会は、人間的なもののある種の 『喪失』、あるいは 」少なくとも『蝕み』を経験している。このことは、私たちが共有する人間の尊厳の本質と独自性について、より深く考察することを求めている のです」と説かれた。
*青少年はAIによって妨げられるのではなく、助けられなければならない
教皇はメッセージの最後に、「本物の知恵は、データの利用可能性よりも、人生の真の意味を認識することに関係しています」とされ、この観点から、この会議の審議が、「若者が真理を道徳的・精神的生活に統合することを可能にし、その結果、彼らの成熟した決断に情報を与え、より大きな連帯と一致の世界への道を開くことを可能にする、必要な世代間の徒弟制度の文脈の中でAIについても検討される 」ことへの期待を表明された。そして、「あなた方の前に課せられた任務は容易ではありません。しかし、極めて重要なものです」と締めくくられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)