☩「AIが健全な人道的・社会的・統合的な発展に役立つよう、社会のあらゆるレベルで適切な対応が求められている」教皇、ダボス総会参加者に

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)会場ホール前 2025年1月23日 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)会場ホール前 2025年1月23日   (REUTERS)

(2025.1.23  バチカン放送)

 教皇フランシスコが23日、スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にメッセージをおくられ、人工知能(AI)がそれを設計した人間の知性を模倣するように構想されているために起きる問題や課題を指摘された。

 教皇が指摘されたのは、①AIの人間の能力に似た、あるいはそれを凌駕する高度な技術とスピードを伴う創造性が人類の役割に与える影響②AIが作り出すものの成果が人間のそれとほとんど区別がつかないために、公共の場における真実・正真性の危機が高まる懸念③自律的に学習し特定の選択をするように設計されたこのテクノロジーが、新しい状況の中でプログラマーが予期しない反応をし、倫理責任、安全保障などに関わる重要な問題引き起こす疑念など、だ。

 そして、AIの技術が「いくつかの可能性の中から技術的に選択し、その選択は明確に定義された基準、あるいは統計的推論に基づいている」のに対し、「人間は、単に選択するだけではない、『心』を通して『決断』する能力を持っています」と強調。

 さらに「他のあらゆる人間活動や技術開発と同様に、AIも人間に適応して規律づけられ、より大きな正義、より広がる兄弟愛、より人間的な社会秩序を実現するための努力の一部とされなければなりません」と総会出席者たちに忠告された。

 また、教皇は、「世の中の問題が、すべてテクノロジー的手段をもって解決可能と考える『技術支配的な思考体系』の増長にAIが利用される危険」を指摘され、「こうした考え方の中では、人間の尊厳や兄弟愛は効率追求の二の次にされ、現実や善や真理が、あたかも技術的・経済的権力から生まれるかのようになってしまいかねない」と警告。

 そのうえで、「効率を優先するあまり、人間の尊厳が侵害されることはあってはなりません。すべての人の生活を向上させるのではなく、不平等や対立を生み、それを増大させるような技術の開発は、真の進歩とは呼べない」とされ、「AIが健全な人道的・社会的・統合的な発展に役立てられること」と強く希望され、「AIの複雑さを管理するために政府と企業は十分な注意を払うとともに、AIの適用をめぐる状況と社会に与える影響が次第に明らかになることに対して、社会のあらゆるレベルで適切な対応をとる必要がある」と述べられた。

(編集「カトリック・あい」)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年1月24日