(2023.10.19 Vatican News By Thaddeus Jones)
教皇フランシスコ19日夜、聖ペトロ広場で「移民と難民のための徹夜の祈り」を主宰され、「私たちは、現代のすべての旅人の『隣人』となり、彼らの命を救い、傷を癒し、心を落ち着かせるよう求められています」と強調された。
祈りには、シノドス総会に参加している司教、枢機卿らとともに、カメルーン、ウクライナ、エルサルバドルからの難民も加わった。祈りは聖ペトロ広場の「Angels Unwares」記念碑の前で行われた。この記念碑は、ブロンズと粘土で作られた等身大の彫刻で、さまざまな文化的、人種的背景、さまざまな歴史的時代の移民と難民のグループを描いている。
教皇は徹夜の祈り中で、さまざまな移民・難民ルートで命を落としたすべての人々を悼む黙祷を捧げられ、また、この徹夜の祈りで読まれたルカの福音書の「善きサマリア人」の箇所を取り上げ、「このたとえ話は、閉ざされた世界から開かれた世界へ、戦争中の世界から平和な世界へどのように移行すべきか、を示しています」と語られた。
そして、「たとえ話で描かれた時代、エルサレムからエリコに旅する人たちが出会う危険は、現代の、敵対的な砂漠、森林、海を通って移動する人々が直面する危険に似ています。 非常に多くの人が強盗され、裸にされ、殴られ、しばしば悪徳人身売買業者に騙され、商品のように売られています」と指摘。「 移民や難民の人たちが今日、直面しているのは、誘拐、搾取、拷問、強姦の危険。目的地に到着するまでに生き残れない人も多い。 悲しいことに、今日でも人々が戦争やテロから逃れているのを、私たちは目の当たりにしています」と語られた。
さらに教皇は、『善きサマリア人』で描かれた、山賊に殴られて道端に横たわっている男性に同情したサマリア人の証言を思い起され、「彼は負傷した男性を見て同情しました。同情心は、心に刻まれた神の痕跡です。私たちの心の中には、神がいます。山賊に襲われた人は、”よそ者”のおかげで、回復しました。それは単なる支援ではなく、友愛の結果でした」と説かれた。
そして、「善きサマリア人のように、私たちは、現代のすべての旅人の隣人となり、彼らの命を救い、傷を癒し、痛みを和らげるように努めることを求められています。 多くの人にとって、悲劇的なことに、もう手遅れであり、たとえ彼らに墓があったとしても、私たちは彼らの墓の前で泣くだけしか残されていません。 しかし主は彼ら一人一人の顔をご存じであり、それを忘れられません」 と訴えらえた。
また教皇は、「善きサマリア人の行動は単純な慈善活動を超えており、彼の奉仕を特徴付ける4つの動詞、つまり『歓迎』『保護』『促進』『統合』で構成されています。善きサマリア人も、当面のケアにとどまらず、完全に回復することを確認しながら、正常に戻れるように、長期的にわたる責任にを果たそうとしました」と指摘。
そして、現代においても、「このような長期にわたる連帯が、より包括的で、より素晴らしい、より平和な社会の発展につながるのです」と強調され、さらに、 「私たち全員が可能なもう一つの行動は、「現代の旅人が盗賊の犠牲にならないように、”道路”をより安全なものにするよう努力すること。人々の希望や夢を搾取する犯罪ネットワークに対抗するためにも、さらなる努力が必要です」と語られた。
また安全なルートを作るには、「移民・難民の正規の経路を拡大する努力」とともに、「人口統計および経済政策を、移住政策と”対話”させる必要がある。また今後も増加を続ける可能性が高い移民・難民の流れを管理するための共通かつ責任ある方法を開発するよう努める必要もあるが、その場合も、最も脆弱な人々に気を配ることが肝要です」とされた。そして次のように説教を締めくくられた。 「私たちの扉をたたくすべての移民・難民に寄り添う恵みを主に願いましょう。今日、強盗でも通行人でもない人も、怪我するか、怪我人を肩に担ぐからです」と参加者たちに促された 。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)