
(2024.12.14 Vatican News Salvatore Cernuzio)
教皇フランシスコは14日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が1000日を超えてほぼ1か月後に、ロシア駐在のジョバンニ・ダニエロ教皇大使に書簡を送り、罪のない人々に与えられた苦しみを嘆きつつ、平和を求める外交努力を進めるよう、強く求められた。
教皇は先月19日にウクライナ駐在の教皇大使に書簡を送っていたが、今回、再びペンを取り、ロシアにおける教皇代表に書簡を送った。
教皇は先月19日にウクライナ駐在の教皇大使に書簡を送っていたが、今回、再びペンを取り、ロシアにおける教皇代表に書簡を送った。
書簡の中で、教皇はウクライナでの軍事侵略の長期化について、人類に与えられた「深刻な傷」とし、深い悲しみを改めて表明。「最も弱い立場にある人々への人道支援の取り組みが、紛争の進行を食い止め、待ち望まれる平和を実現するために必要な新たな外交努力への道筋を開くことを私は信じている」と述べられた。
*苦しむ人々に寄り添い、「通訳者」となるように
ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して、先月19日に1000日が経過。 3年近くにわたる爆撃、殺害、負傷、投獄により、数十万人が命を落とし、家族が引き裂かれ、数えきれないほどの涙が流された。侵攻が始まって以来、教皇は苦しむ人々に対して「等距離の親密さ」の原則に基づいて行動することを目指してこられた。この原則は普遍的な教会の指導者である教皇にふさわしく、バチカン外交の特徴でもある。
教皇は今回の書簡で、「戦争で愛する者を失い、あるいは行方不明や捕虜となり、負傷した人々を心配する何万人もの母親、父親、子供たちの苦痛の『通訳者』を目指そう… 彼らの叫びは神に届き、戦争ではなく平和を、武器の轟音ではなく対話を、利己主義ではなく連帯を呼び起こす。神の名の下に人を殺すことは決してできないからです」。
*平和の再建について共に考え、新たな外交努力への道を開け
そして、「この痛ましい戦争が長引いていることは、私たちに緊急の課題を突きつけています。戦争の影響を受けた人々の苦しみを和らげ、平和を再建する方法について共に考える義務が、私たちにはあるのです… 私たちは皆、真の人間的な同胞愛の精神をもって、互いに責任を負うべきなのです」と強調された。
さらに、「空爆、砲撃による民間人の死、武器輸送の増加、そしてますます手の届かないものとなる停戦に関する多くの報告が寄せられていますが、私が一番、心を痛めているのは、何よりも罪のない人々が苦しまされていることです」と訴えられた。
教皇は書簡の中で、ロシア文化に言及され、ご自身にとって最も親しみのある作家の一人、フョードル・ドストエフスキーの著書『カラマーゾフの兄弟』の第5巻第4章に登場するイワン兄弟が、人間の苦しみ、特に子供たちの苦しみによって神の創造した世界を拒絶するようになったことを、兄弟のアレクセイに説明する対話を引用する形で、「罪のない人々に与えられる苦しみは、あらゆる暴力に対する強力な告発である」と語られた。
そして、このような苦しむ人々の叫び声に加わるために、「私は、破壊された生活、破壊、苦しみ、そしてこの戦争によって人類に与えられた深刻な傷によって心を痛めています。最も弱い立場にある人々への人道支援の取り組みが、紛争の進行を食い止め、待ち望まれている平和を実現するために必要な、新たな外交努力への道を開くことを私は信じています」と力を込められた。
*平和の贈り物を懇願
書簡の最後に教皇は、「ロシアの人々に親しまれている神の賢者」である聖セラフィム・オブ・サロフの言葉を引用する形で、「平和の精神を身に着けなさい。そうすれば、あなたの周りの何千人もの人々が救われるでしょう」と語られた。書簡には、キリル文字で「Стяжи дух мирен и тысячи вокруг тебя спасутся.」と同じ言葉が書かれている。
そのうえで、教皇は、「全人類の幸福のために、善意あるすべての人々に対し、神への祈りに参加し、平和の贈り物を懇願し、この崇高な目標に貢献する、という誓いを新たにしよう」と呼びかけられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)