(2022.12.5 Vatican News Lisa Zengarini)
イタリアのジャーナリストがウクライナ侵略の終結を願う教皇フランシスコの言葉をまとめた「Un’enciclica sullapeace in Ucraina(ウクライナの平和に関する回勅)」と題する本が5日、Edizioni Terra Santa社から出版された。教皇はその本に巻頭文を寄稿され、 キリスト教的観点から希望、戦争の不当性と無意味さ、平和を積極的に支持するすべての人の義務について語られた。
*いつも『キリストの眼差し』をもたねばならない
教皇は巻頭文を、イタリアの作家アレッサンドロ・マンゾーニによる有名な小説「I Promessi Sposi(婚約者)」からの引用で始められた。「それを終わらせずに奇跡を始められる主を、私は見たことがない」ーこの言葉が、「2025 年の聖年のために私が選んだ標語『希望の巡礼者』に、ひらめきを与えてくれました」と語られた。
そして、また、ベネディクト 16 世教皇が希望についての素晴らしい回勅「 Spe salvi (希望によって私たちは救われた)」を私たちにくださったこと、その中で、逆境の最中でキリスト教徒が持つ希望の力は、キリストが私たちを救ってくださることへの信頼と、「主が、私たちが地上にとどまることをお望みにならず、私たちの手を取って天に挙げてくださることへの強い確信」に基づいている、と語っておられること、を指摘。
そのうえで教皇は、「キリスト教徒はー深い思いやりをもって、低いところから抱きしめ、道に迷った人を捜し求める『キリストの眼差し』を持たねばなりません。そして、『教会の眼差し』はいつも『キリストの眼差し』でなければならず、『非難の眼差し』であってはならなりません」と説かれた。
*戦争は神の名を傷つける
教皇は、そうした視点から、ロシアの軍事侵略で始められたウクライナでの「無意味で冒涜的な」戦争、そして、「神の最も聖なる御名を侮辱する」すべての戦争を、「道徳的または宗教的に正当化できるキリスト教徒はいません」と強調。
「復活された主の福音を宣べ伝える私たち神の子には、この信仰の真実を叫ぶ義務があります。神は、『平和、愛、希望の神』です。 御子イエス・キリストが私たちに教えられたように、私たち皆が兄弟であることを望んでおられる神です。 戦争、あらゆる戦争の恐怖は、神の最も聖なる御名を傷つけます。 そして、筆舌に尽くしがたい大殺戮を正当化するために神の名を悪用するなら、神をさらに傷つけることになります」と訴えられた。
*戦争では誰もが敗者となる
さらに教皇は、第二次世界大戦が勃発する前夜の教皇ピウス 12 世の言葉を引用する形で、「戦争では、誰もが敗者となります。戦いに加わらない人も、勇気がなく、われ関せずの立場を取った人も、傍観し、平和ともたらすことに努めずに、恐ろしい現実をただ見ていた人さえも、敗者となるのです」と警告。
「私たちは皆、どのような役割であろうと、平和の導き手となる義務を負っています。誰にも、目を背ける権利はありません」と強調された。
最後に、教皇は、ロシアがウクライナ軍事侵略を開始してからこれまでの自身の訴えをまとめてくれたイタリア人ジャーナリストのフランチェスコ・アントニオ・グラナに謝意を述べるとともに、ウクライナに平和が回復されるように祈り、ウクライナはじめ世界中で起きている”断片的な第三次世界大戦”、私たちの目の前で”本格的になりつつある第三次世界大戦”を「”習慣化”してしまわないように」と、世界のすべての人に改めて強く訴えられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)