☩「性的虐待問題への対応は司法的措置の厳格化だけでは不十分、だが正義の再建に必要」ー教理省の総会参加者たちに

Pope Francis with member of the Congregation for the Doctrine of the Faith during their Plenary Assembly in the VaticanPope Francis with member of the Congregation for the Doctrine of the Faith during their Plenary Assembly in the Vatican  (Vatican Media)

(2022.1.21  Vatican News staff writer)

   教皇フランシスコは21日、バチカン宮殿で教理省の定例総会参加者たちとお会いになり、教理省の命を果たすうえで「尊厳」「識別」「信仰」の3つの言葉が重要である、と強調された。

 教皇は「識別」について、「今日、信仰をもつますます多くの人々に識別の技が求められています」とされてうえで、(現在も欧州を中心に相次いで明らかにされている聖職者による未成年者などへの性的虐待の問題を念頭において=「カトリック・あい」)「識別力の行使は、あらゆる種類の虐待との戦いに求められるもの。神の助けを借りて、教会は、そのメンバーに虐待された犠牲者に正義をもたらすという自身の責務を断固として追求しつつあります」と述べ、さらに次のように語られた。

 「このような観点から、私は最近、この問題に対する司法的措置を厳格化することを希望し、教理省が担当する(聖職者による)犯罪に関する規範を更新しました。 司法的措置だけではこの現象を食い止めるのに十分ではありませんが、正義を再建し、恥ずべきことを正し、犯罪者を改めさせるために必要な手段です」

 

(2022.1.21 バチカン放送)

 教皇は参加者への挨拶で、信仰と倫理をめぐる教会の教えの全体性を守り、推進する教理省の役割について、「尊厳」「識別」「信仰」の3つをキーワードに考察。

 回勅「Fratelli tutti(兄弟の皆さん)」で述べた「すべての人の尊厳を認めながら、兄弟愛の世界を築きたい」との思いを語りつつ、「兄弟愛が、創造主の計画された人類の歩みの目的地であるなら、そこに向かうための道は。すべての人の尊厳を重んじることにあります」と話された。

 そして、「社会的、政治的な緊張に満ちた今日、他者を自分とは関係のない存在、あるいは敵とみなし、その尊厳を否定する傾向が広がりつつある。こうした時代にこそ、誕生から自然死に至るまでの、人生のすべての過程にある人間の尊厳を重んじるように、あらゆる機会を通し呼びかけて行かなくてはなりません」と訴えられた。

 また、時代の変容の中を生きる今日、キリスト者たちに「識別の技術」が求められている、と指摘。「あらゆる種類の虐待との戦いのためにも、識別の訓練が必要です」とされたうえで、現在の教会が、聖職者による性的虐待の問題に対し、特別な関心と厳格さをもって教会の規則を適用していることを強調された。

 同様に、「識別の努力は、婚姻の無効を扱う場合においても必要」とされ、「教会が婚姻の無効を宣言する時は、すでに事実上破綻した結婚に教会法上の決着をつけるだけでなく、この司牧的行為を介して、新しい結婚、家族において常に信仰を励まさなくてはなりません」と語られた。

 さらに、教皇は、教理省の使命について、「信仰を守るだけでなく、信仰を励ますことにもある。信仰が無いなら、世界の信者たちは、単なる人道組織のメンバーになってしまいます」と警告。

 そして、「信仰は、すべてのキリスト者の生活と行動の中心をなすべきもの。平凡で曖昧な、”水で薄めたような信仰”ではなく、本物の混じりけのない信仰であるべきです… 危機感を抱かせない信仰は”危機的な信仰”であり、成長させない信仰は”成長すべき信仰”であることを忘れてはなりません」と説かれた。

 さらに、「”マニュアル通りのなまぬるい信仰”に安住せず、聖霊と、人々と、協力し合いながら、イエスが世にもたらした火が、すべての人の心に燃え続けるように努力しましょう」と励まされた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年1月21日