☩「人間についての生きた考察がなければ、信仰は実体のないものになる危険がある」教皇、イタリアの司教団に”警告”

(2025.6.17  Vatican News  Deborah Castellano Lubov)

　教皇レオ14世は17日朝、バチカンの祝福の間で、イタリア司教協議会（CEI）の司教たちと会見され、「信仰を宣べ伝えるためには、新たな衝動が必要です。それはイエス・キリストを中心に置くことを意味します」として、福音宣教の責任を果たすよう求め、また平和を育み、共に働くように促された。

　挨拶で教皇は、司教たちの役割として、collegiality（合議性）、証し、そして何よりも、故教皇フランシスコが使徒的勧告「Evangelii gaudium（福音の喜び）」で示された道に従って、「人々が福音の喜びを発見できるように、主イエス・キリストとの個人的な関係を生きるのを助けること 」を強調。

　さらに教皇は「私たちは大きな分断の時代に生きています。その中で必要なのは私たちの信仰の基礎、kerygma（福音宣教）に立ち返ること。すなわち、使徒的使命を新たにし、分かち合うことによって、キリストを人類の ”血管”の中に 導き入れることです」と語られ、「最も遠いところにいる人々にも届くことができる司牧的行動 」と、「教理教育と宣教の言葉を刷新するための適切な手段」によってすべての人に福音をもたらす方法を、見極めるよう求められた。

　また、「親愛なる兄弟たちよ、喜びを胸に、歌を口ずさみながら、共に歩みましょう。神は、私たちの平凡さよりも偉大です！神の摂理に信頼しましょう」と司教たちに呼びかけ、「福音、平和、人間の尊厳、対話を宣べ伝えることで、福音を体現し、神の国のしるしとなるよう、教会を育てることを求められた。

　続けて教皇は、小教区と近隣する地域、都市やその周辺地域を思い浮かべながら、「主は、『平和があなた方と共にあるように！』という主の賜物そのものをもたらすために、私たちを世に遣わされるのです」とされ、「人間関係や社会関係が困難になり、対立が生じるところでは、『目に見える和解の教会』が存在せねばなりません 」と説かれた。

　さらに司教同士、教皇との間でcollegiality（合議性）を推進し、政府関係当局との協力を通じて交わりの原則を反映させるよう促された。

　教皇は、2006年に前々任の教皇ベネディクト16世がイタリアの教会について、「あらゆる年齢や境遇の人々の間で広く存在感を保ち、非常に活気に満ちており、キリスト教の伝統が今もなお、しばしば深く根を下ろし、実を結び続けている 」と述べたことを思い起こしつつ、イタリアのキリスト教共同体は「世俗主義、信仰に対するある種の不信仰、人口危機と結びついた 新たな課題に直面し続けている」と指摘。

　そうした現実を抱えているにもかかわらず、故教皇フランシスコがたびたび口にされた 「不穏にならないように、平和に向けて努力するように」という言葉を繰り返され、「すべての共同体が、『平和の家』になる必要があります。そして平和は『精神的なユートピア』ではなく、むしろ日々の行動の積み重ねから成る謙虚な道です」と強調された。

　また、AI（人工知能）、バイオテクノロジー、データ経済、ソーシャルメディアなど、「人間の尊厳の尊重に疑問を投げかける課題」を挙げ、「これらは、私たちの人生に対する認識や経験を大きく変容させようとしています」と指摘。「このような状況の中で、人間の尊厳は、機能、自動化、シミュレーションに取って代わられ、平坦化されたり、忘れられたりする危険性があります」と警告された。

　続けて教皇は、イタリアにおける教会の歩みが、「イエスの中心性と首尾一貫した共生のうちに、司牧的識別の不可欠な道具としての人間学的展望を含むことを望みます。人間の身体性、脆弱性、無限への渇望、関係性への能力など、人間という存在についての生きた考察がなければ、倫理は”規範”に還元され、信仰は実体のないものになってしまう危険があります 」と警戒を求められた。

　挨拶の最後に、教皇は司教たちに「一致団結して前進する」ように、「明日に向かって、平静を保ちつつ、勇気ある選択を恐れない」ように促され、「人々に寄り添い、命を分かち合い、最も貧しい人々と共に歩み、貧しい人々に奉仕することを妨げる者がいてはなりません。誰も、福音を宣べ伝えることを止めることはできません 」とされ、「福音こそ、私たちがもたらすために遣わされている良き知らせであり、これこそ、すべての人が、よく生き、幸福になるために、まず第一に必要とするものなのです」と強調された。

　また教皇は特に、イタリアの司教たちに、「神の言葉によって養われ、教会の社会教義によって育てられた信徒たちが、それぞれの職場、学校、病院、社会的・文化的環境、経済、政治の分野において、福音化の 主人公となるように気を配るよう促され、使徒的祝福を授ける前に、聖母、ロレートの聖母、ポンペイの聖母、そしてイタリア全土に点在する無数のマリア礼拝堂の守護に委ねられた。