☩「人々に『栄養を与える』よりも、紛争に『油を注ぐ』ことが容易になっている」ー教皇が警告、WFP執行委員会あいさつで

Pope Leo XIV speaks at the headquarters of the World Food Programme in RomePope Leo XIV speaks at the headquarters of the World Food Programme in Rome  (@Vatican Media)
(2026.6.22 Vatican News  Deborah Castellano Lubov)

   教皇レオ14世は22日、ローマの国連世界食糧計画(WFP)本部を訪問され、執行委員会でのあいさつで、「食料、水、医療は地政学的利益に従属させてはなりません」と強調、加盟各国に対し、新たな多国間主義のもとで協力するよう呼びかけられた。

  あいさつの冒頭で教皇は、緊急事態における人命救助や、紛争・自然災害時の食糧支援に尽力するWFPに感謝の意を表し、「あなたがたの取り組みは、『隣人を愛する』という福音の呼びかけに根ざした『人間の尊厳を守り、兄弟愛を育む』というカトリック教会の使命と深く共鳴しています」とされた。

 そして、「私たちは『共に、 飢餓と栄養失調に立ち向かう』という緊急の課題を共有すると同時に、それらを支える根本的な構造的原因に対処せねばならない。この課題に効果的に対処するためには、私たちの前にある課題、その根本原因、そして永続的な解決策への道筋を検討する必要があります」と言明。そのうえで、課題に取り組むために、多国間主義が不可欠であることを強調し、「水、食料、医療といった基本的なニーズは地政学的利益に従属させてはなりません」と訴えられた。

 また教皇は、「今日の危機は、長期化する紛争、慢性的な食料不安、経済の変動、そして増大する気候変動への脆弱性を特徴としている」と指摘。そして、「どのような世界秩序の構造が、こうした状況を生み出し、再生産し、時には常態化させ得るのか、という根本的な問いを提起している」とされ、この問題は、もはや「いかに対処すべきか」だけではなく、「なぜシステムが、自ら是正を余儀なくされる、まさにその問題を絶えず生み出してしまうのか」を考えねば対処できない段階にきている、と強調された。

 

 

*世界が分断化し、「連帯の漸進的官僚化」と「人命の静かな商品化」が進んでいる

 教皇は、多国間システムの危機などが原因になって世界がますます分断されていることを嘆かれ、「世界各国は、自国の安全保障、経済成長、安定に向けて資源を多く割り当てており、これらの問題と多国間協力との密接な関連性を無視している」と指摘。

 「このような傾向は、『前例のない世界的な生産能力が存在する一方で、極度の脆弱性が広がる地域も存在する』という驚くべきパラドックスを浮き彫りにしている… まさに、原則としての認識と、実践における優先順位の付け方のギャップの中で、『連帯の漸進的官僚化』と『人命の静かな商品化』が並行して進んでいるのを、私たちは目の当たりにしているのです」と言明された。

 さらに、「人道支援活動が、官僚的な手続きによってますます負担が増し、困っている人々への支援が遅れる可能性が強まる一方で、食料を含む生活必需品へのアクセスが、経済的あるいは戦略的な考慮によって影響を受けることがあまりにも多くなっている」と批判。

 

*対外援助や開発支援が妨げられる一方で、武器取引は妨げなく行われている

 このような結果、「定量化可能な価値を生み出さない人々は、視界から消える危険にさらされている。この二重の力学は、深刻な倫理的課題を生み出しています。すなわち、『人間は、もはや、一貫して国際的な行動の中心に据えられていない』ということです」と教皇は慨嘆。

 こうした文脈において、教皇は、フランシスコ教皇が強調されたように、「援助や開発プロジェクトが、複雑で理解しがたい政治的決定、偏ったイデオロギー的ビジョン、そして乗り越えがたい関税障壁によって妨げられる一方で、武器(取り引き)はそういうことがない、という事実を認識することが重要です。実際のところ、人々に『栄養を与える』よりも、紛争に『油を注ぐ』ことの方が容易なのだ。この現実は、運営上の欠陥だけでなく、政治的・道徳的優先順位の根本的な不均衡をも反映している」と非難された。

*WFPは、人道危機が取り返しのつかない事態を招くのを防ぐ一助となるべき

 

 教皇は、こうした現状は、「飢餓が単なる人道上の懸念にとどまらず、社会的結束を蝕み、紛争のリスクを高め、強制移住を助長している」とし、この観点から、「人道支援活動は、国際秩序とは無関係なものではない。連帯を強化し、排除に抵抗し、すべての人に神から与えられた固有の尊厳を認めるという責任が、世界の国々、国際機関にあるのです」と強調。

 「国際機関は、危機の管理にとどまらず、責任分担の原則を体現し、世界が最も脆弱な状況にある人々への配慮によって結ばれていることを確認する存在。その意味で、WFPは、単なる政治的、経済的、あるいは技術的な主体にとどまらない、国際連帯の具体的な表れです。国家機関が後退し、地域社会のネットワークが崩壊する場所において、その存在は、人道危機が取り返しのつかない事態と招くのを防ぐ一助となるべきです」と訴えられた。

 

 

*世界的危機への対処に、多国間協力への新たな取り組みが必要だ

 さらに教皇は、現在の世界的危機に対処するために、「多国間協力への新たな取り組みが必要」とし、世界各国の政府と国民に対し、「新たな取り組みによって、多国間協力を強化し、飢餓とその根本原因と闘うための資源を増強し、支援が困窮する人々に届くのを妨げる障害を取り除くように」と呼びかけられた。同時に、「教会や市民社会との連携も強化すべき」だとされ、「これらすべての主体が一体となって能力を強化することで、飢餓との闘いにおける私たちの集団的取り組みの効果は倍増するでしょう」と強調。

 そして、この呼びかけを実行に移すには、「不必要な官僚主義を削除し、透明性と説明責任を果たすことが支援を妨げないように、人々のために機能するようにすることが必要です。政府が効果的な統治能力を欠いている状況や、人道支援へのアクセスが制限されている状況では、信頼できる現地のパートナーの存在が不可欠になります」と指摘された。

 

 

*カトリック教会の人道支援活動への協力も期待

 

 また教皇は、カトリック教会が、小教区、教区、カリタス、その他の取り組みを通じて、他の国際援助機関がアクセスできない地域で、しばしば脆弱な立場にある人々に支援の手を差し伸べていることに言及され、WFPとそのパートナーに対し、こうした取り組みを引き続き支援するよう求められた。

 WFPの活動に関連して、教皇は、「食糧援助は、人々の苦しみを和らげるだけでなく、地政学的な不安定をもたらしている根本原因に対処することにもつながる。それは、食糧安全保障がグローバルかつ包括的な安全保障の不可欠な要素だからです」とされ、WFPが緊急支援活動にとどまらず、途上国の児童たちへの給食プログラムなど長期的な取り組みにも取り組んでいることを称賛された。

*国際協力そのものの信頼性が問われている

  あいさつの最後に教皇は、「問われているのは、特定の機関の有効性だけでなく、国際協力そのものの信頼性です。WFPの活動は、新たな道筋が可能であることを示している。だが、実際に可能とするためには、『過度に複雑化してしまったものを簡素化し、本質的なものを優先し、誰も置き去りにされないようにする』という決意が必要です」と言明。

 最後に、「神が皆さんの努力を祝福し、すべての人が日々の糧を受け、尊厳を持って生きられるように」と祈りを捧げて、あいさつを締めくくられた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2026年6月23日