
(2024.12.7 Vatican News Lisa Zengarini)
教皇フランシスコは7日、バチカンの聖ペトロ広場に飾られたキリスト降誕の場面とクリスマスツリーの今年の寄贈者たちと会見され、聖地や世界中で続く戦争と暴力に対して、平和への強い願いを新たにされた。
「もう戦争はたくさんです!暴力もたくさんです!」―教皇はこの会見でのあいさつで、改めて強く訴えられた。
キリスト降誕の場面はイタリア北部フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のグラード市で制作され、高さ29メートルのモミの木はトレンティーノ州レドロの森から運ばれてきた。地元の職人によって制作され、パウロ6世ホールに展示された「2024年のベツレヘムの聖誕」の除幕式には、駐バチカンパレスチナ国大使館の代表者も出席した。
*教会の隠喩としてのクリスマスツリー
生態学上の原則に従って自然の森林再生を考慮して伐採されたというクリスマスツリーについて、教皇は、その深い精神的な意味を指摘され、「空に向かって伸びる古い枝と若い枝が織りなすクリスマスツリーは、教会の比喩として非常に力強い意味を持っています… キリストの光が世界に広がるための民であり体である教会は、イエスという一つの源に結ばれた信者たちが世代から世代へと受け継ぐことで成り立っているのです」と説かれた。
*キリスト降誕は謙虚さと交わりのメッセージだ
聖ぺトロ広場に展示されたキリスト降誕の場面は、グラード潟の伝統的な「カソーネ」を模して作られたもの。教皇は、「泥や葦などのシンプルな素材で建てられた質素な漁師小屋が、クリスマスを象徴しています… それは、神が人となり、私たちの貧しさを完全に分かち合い、強力な手段ではなく、神の恵みによって浄化され、強められた私たちの人間性の謙虚な資源によって、地上に神の王国を築された瞬間です」と語られた。
*教会にはすべての人を受け入れる余地がある
また教皇、ラグーンを航行するために使われる典型的な平底船「バテラ」と、キリストのもとへと人々を導く船としての教会を比較され、「イエスは、一人きりではおできになりませんが、共に、つまり共同体として、ペトロが導き続けるその小さな、しかし偉大な舟に乗り、皆が共に集うことで、そこには常にすべての人を受け入れる余地ができるのです… 教会には常にすべての人を受け入れる余地がある。『罪人にはどうなのか?』という声が聞こえてくるかもし知れませんが、罪人のためにこそ、イエスは来られたのです。罪人のために、私たち皆のためにです。聖人のためではありません」と強調された。
*もう、戦争はたくさんだ!
最後に、ベツレヘムで制作された「キリスト降誕」に目を向けられた教皇は、「聖地や世界の他の地域で戦争の悲劇に苦しむ兄弟姉妹を思い起こさせます」とされ、「戦争はもうたくさんです!暴力ももうたくさんです!」と訴えられ、戦争と死によって繁栄する兵器産業を取り上げ、「世界で最も利益率の高い投資先の一つが兵器産業であることをご存知でしょうか? 彼らは殺すために金を稼いでいるのです。 どうしてそうるすのでしょう? もう戦争はたくさんです!」と強く非難された。
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バチカン宮殿のパウロ6世ホールに展示された「2024年のベツレヘムの誕生」は、ベツレヘム出身の2人のアーティスト、ジョニー・アンドニアとファテン・ナスタス・ミトワシによってデザインされた。高さ3メートルのメイン構造は、さまざまなキリスト降誕の場面を展示する棚を備えた円形の土台と、その上に飾られた有名なベツレヘムの星で構成されている。 この作品は、地元の職人たちが何世紀にもわたって受け継いできた伝統と現代的な要素を融合させたものとなっている。主な構造には鉄が、聖家族やその他の場面を表現した彫刻にはオリーブの木が、また、真珠層、石、陶器、ガラス、フェルト、布なども使用されている。作品の準備、収集、制作にあたっては、地元のキリスト教関連の複数の機関と協力した。
*聖ぺトロ広場のクリスマスツリーとキリスト降誕の飾り付けの開始式
聖ぺトロ広場のクリスマスツリーとキリスト降誕の飾りつけの除幕式は、7日夕、バチカン市国政府の長であるフェルナンド・ヴェルヘス・アルサガ枢機卿と、同政府の事務局長であるラファエラ・ペトリーニ修道女によって執り行われた。式典の参加者は、ゴリツィアのカルロ・ロベルト・レダエリ司教、トレントのラウロ・ティシ司教、グラードおよびレドロの市長、トレント州知事など。 グラードのキリスト降誕の場面は、この都市のアイデンティティの活気あふれる歴史的な部分である独特な潟の側面を反映しており、愛がそのテーマとなる。また、レドロのクリスマス用トウヒの木が選ばれたのは、その美的価値だけでなく、環境への配慮という理由もあった。この木を伐採することで、今後数十年にわたって森の自然再生が保証される。地元の森はPEFC認証を取得しており、これは環境、社会、経済の面で最も厳しい基準に従って管理されていることを意味する。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)