種をまくニジェールの女性たち (AFP)
(2025.7.1 バチカン放送)
教皇レオ14世が6月30日、28日に始まった国際連合食糧農業機関 (FAO)総会にメッセージをおくられ、「FAOの対応は重要な進歩を遂げたが、世界の食料事情は悪化をたどっており、私たちは1945年のFAO設立目標から程遠いところにいる」とされ、一層の真剣な取り組みを求められた。
メッセージで教皇はまず、今年創設80年を迎えるFAOが最重要課題の一つである食糧不安と栄養不良への解決を見出すために日々取り組んでいることに感謝を述べられ、「福音書のイエスのパンと魚の奇跡を読むと、キリストによって行われた真の奇跡は、飢えを撲滅するための鍵は『強欲な溜め込み』ではなく、『分かち合い』にあると、気づかされます」と語られた。
そして、FAO設立から80年間に「世界の食料安全保障の状況は悪化をたどり、2030年までに貧困を撲滅するという『アジェンダ2030』の達成は見通せなくなるばかり… これは1945年に同機関が創立された際の目標から私たちが程遠いところにいることを意味します」と指摘。
そのうえで、「地球上では全人類に食糧を十分行き渡らせるだけの生産が可能であるにもかかわらず、食料安全保障をめぐる国際的な取り組みがされているにもかかわらず、世界では多くの貧しい人々が日ごとの糧を得られないでいます。その一方で、今日、戦争の武器として飢餓が不当に利用されているのを、私たちは苦悩と共に目の当たりにしているのです」と訴えられた。
そして、「国民を飢えさせることは、非常に安上がりな戦術であり、今日の紛争では、罪のない市民を支配する目的で、通常の軍隊ではなく、民間の武装集団が農地を焼き、家畜を盗み、支援を阻むケースが目立っています… 多くの人が飢餓で亡くなる一方、政治リーダーたちは汚職や不処罰で富を蓄積しています」と批判され、「今こそ、世界はこうした権力の乱用を制裁し、責任者らを訴追するために、共通の明確な規制措置をとる必要があります」と強く求められた。
また、「平和と安定なくして、強靭な農業食糧システムを確立するのは不可能であり、すべての人に健康的で手の届きやすい食糧の保障はできません。互いに傾聴し、理解し合い、共に行動するための対話が必要です」と訴えられた。
食糧システムと気候変動が相互に影響し合っている点にも言及され、「自然災害と生物多様性の喪失によって引き起こされた社会の不平等は、環境と人間を中心に据えた適切な自然環境保全への移行によって、取り除かれる必要がある」と説かれた。
さらに、「今も止まらない様々な危機と紛争によって”国際関係の巨大な二極化”が進み、世界の貧困と飢餓を撲滅するための資金と技術が兵器の製造と取引に流用され、是非の議論の余地があるイデオロギーが扇動され、人間関係は冷え込み、兄弟愛や社会的友情を妨げている」と世界の現状について述べ、「今こそ、”不毛な雄弁”を脇に置き、確固として政治的意志を持ち、教皇フランシスコが述べられたように『皆の必要を満たすために、相互の協力と信頼ある環境を育むことを目的とした、相違点の解決』が求められます」と強調された。
(編集「カトリック・あい」)