
(2025.3.3 Vatican News Christopher Wells)
教皇フランシスコが、3日に「世界の終わり? 危機、責任、希望」をテーマに始まった教皇庁生命アカデミー総会の参加者にメッセージを送られた。
そして、「世界が直面する”polycrisis(複合危機=複数の危機が絡み合い、大きな影響を及ぼす状況を指す”』に対処するためには、宇宙に対する理解を再評価し、科学の貢献に耳を傾け、国際機関を強化する必要がある」と訴えられた。
メッセージで教皇は、「戦争、気候変動、エネルギー問題、伝染病、移民、技術革新など、世界が直面する複合危機、すなわち”polycrisis”が、世界の運命と、私たちがそれをどのように理解しているかについて問いを投げかけている、と指摘。
この問いに対して、「まず私たちは、世界と宇宙に対する理解を検証し、個人として、また社会として、変化に対する根深い抵抗を克服せねばなりません」とされ、それにもかかわらず、世界的なコロナ大感染などの過去の危機から学ぶ機会を逃し、「良心と社会慣習を変革する」ことができなかったことを嘆かれた。
また、教皇は「立ち止まらないこと」と「科学的知識の貢献に耳を傾けること」の必要性を強調。教皇庁のアカデミーの活動は、「傾聴」をキーワードの一つとした昨年10月閉幕の世界代表司教会議(シノドス)とも響き合うもの、と述べられた。
また、教皇は「立ち止まらないこと」と「科学的知識の貢献に耳を傾けること」の必要性を強調。教皇庁のアカデミーの活動は、「傾聴」をキーワードの一つとした昨年10月閉幕の世界代表司教会議(シノドス)とも響き合うもの、と述べられた。
さらに、現在、世界中で顕著になっている「功利主義的かつ地球規模の規制緩和への迎合」を批判され、それは「非人間的な」「最強者の法」の強要につながる、と警告。そうした傾向に抗する「世界に対する新たな見方や進化」は「私たちに希望の兆しをもたらすことができ、私たちの歩みを支え、真の人生に向かって勢いよく手を差し伸べるよう私たちを鼓舞するのです」と説かれた。
同時に、「このような努力は、必然的に共同体的な文脈の中で行われるもの」であり、「複雑かつ地球規模の危機」に対する解決策を見出すことが強く求められている中で、「特定の国益を守ろうとする近視眼的な態度によって弱体化している国際機関が、徐々に無意味な存在になっていくこと」への懸念を表明。
そして、そのような懸念を払しょくするためにも、「人類社会は、世界全体の共通善、飢餓と貧困の根絶、基本的人権の確実な保護を確保する権限を付与された、より効果的な世界的な組織を目指さなければなりません… そうすることで、政治の浮き沈みや一部の利益に左右されない多国間主義を推進し、安定した効果を発揮することができるのです」と強調された。。
最後に教皇は、「これこそ、アカデミーの幅広い活動の背景にあるもの」とされ、メンバーたちに感謝されたうえで、「知恵の座であり、希望の母であるマリア」に取り次ぎを願われた。
(なお、このメッセージは2月26日に用意されていたものだ。)
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)