
人工知能利用の倫理問題をめぐる宗教指導者らの会合の参加者たち 2024年7月10日 広島

「平和のための AI 倫理:ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」 (AI Ethics for Peace: World Religions commit to the Rome Call)と題されたこの会合は、教皇庁立生命アカデミー、世界宗教者平和会議・日本委員会、アブダビ平和フォーラム、イスラエル諸宗教関係首席ラビ委員会が共催し、13 カ国から 150人以上の参加者を得て開かれた。
教皇は、メッセージで、「人工知能」と「平和」を、「絶対的な重要性を持つ2つのテーマ」として結びつけられた。
そして、先月イタリア南部プーリアで開かれた主要7カ国首脳会議(G7)で「人工知能」をテーマになさった演説を引用しつつ、「機械は、新しい方法によって、アルゴリズム的な選択を生み出せるのだということを、常に頭に入れておくことが必要です」と改めて強調。
「機械がよく定義された基準、あるいは統計的な推論に基づき、いくつかの可能性の中から技術的な選択をするのに対し、人間は、選ぶだけでなく、心を通して決断する力を持っています」と指摘され、「自立した選択ができるかのように見える機械の驚くべき力を前に、決定は常に人間の側に残るべきことを明確にしなくてはなりません」と訴えられた。
さらに、「仮に、人々から自分と自身の人生についての決定力を取り上げ、機械による選択に頼るなら、人類の未来に希望はありません」と警告され、「AIのプログラムの選択プロセス上に、人間による重要なコントロールの余地を保証し、それを保護する必要があります」と言明。この催しを称賛する中で、「機械使用のこの新たな時代に、人間の尊厳を守るため、私たちが一致して積極的な取り組みを求めていることを、世界に示して欲しい」と願われた。
また、教皇は、世界を揺るがす紛争が相次いでいる中で、「戦争への憎しみに加えて、このテクノロジーについて耳にすることが多くなっていることからも、参加者らが人工知能と平和について話し合うために広島に集っているという事実」に象徴的な意味を見出され、「武力紛争の悲劇が繰り返される中で、いわゆる『自律型致死兵器』の開発と使用の再考が急務であり、使用禁止するためには、より幅広く、効果のある人的な制御を取り入れる必要があること、そして、いかなる機械も人間の命を奪う選択は決してできないことを、皆が兄弟として一致して、世界に思い出させることが重要です」と念を押された。