第一部 教会の生活
教会と教会法
Q カトリック信者には、教会法で決められた共通の権利もあるのです か?
A はい。たとえば自分が選んだ典礼に従って礼拝を捧げる権利やキリ スト者としての教育を受ける権利、プライバシーを侵害されない権 利、などが挙げられます。
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教会法の第二集の最初の条文に、洗礼を受けた人はすべて平等(2 08条)であり、等しく権利を持つことが明記されています。この 場合の権利は、いわゆる「基本的人権」や、国家に対する個人の不 可侵の権利、あるいは人間の尊厳に基づく平等の権利を指すのでは なく、洗礼の恵みから生じる権利のことです。キリストに結ばれて 、教会の一員となった人が、神のイニシアチブでつくられた共同体 の中で何ができるかを、法的な文章で表したものといえます。
信者になることで認められる事柄として、救いの福音を告げ知らせ る権利(211条)、司牧者に対して信仰に関わる必要と願いを伝 え、意見を表明する権利(212条)、霊的な援助、特に秘跡とみ ことばを受ける権利(213条)が挙げられています。このため、 司牧者には、説教を行うことが求められ(767条)、秘跡を受け ることが禁じられていない、受ける準備が整っている信者に秘跡を 拒むことができない(843条1項)と決められています。
また、自分が選んだ典礼に従って礼拝をささげ、 自分の望む霊的生活を送る権利(214条)、 集団を結成する権利(215条)、使徒的な活動を行い、 それを支える権利(216条)があります。こうして、聖職者( 278条)だけでなく、信徒(327~329条)がそれぞれ会を つくり、霊的生活や宣教に役立てることができます。
さらに、キリスト者としての教育を受ける権利(217条)は教義 、霊性、倫理を学び、典礼や使徒活動のために養成を受ける権利を 意味し、信仰に関わる事柄の研究と表現を自由を享受する権利(2 18条)も定められています。
聖職者や修道者になること、結婚生活など教会内の召し出しを強制 されずに選ぶ権利(219条)、プライバシーと名誉を侵害されな い権利(220条)があり、最後に、教会法上の裁判を公正に受け 、法律に明示されているのでなければ刑罰を受けない(221条) という、教会内で法律の保護を受ける権利も示されています。
洗礼を受けた人々の間の愛の関係が、「公正さ」や「権利」という 言葉で表現されることに違和感があるかも知れません。人間の集ま りとはいえ、教会は信仰と愛を生きる共同体ですから、信者個人と 大小のグループの利益が最後まで対立することはないはずですが、 現場では軋轢が残ることもあるでしょう。
以上に説明した信者の権利も絶対的なものではありません。しかし 、現実に大きな問題となるのは、聖職者も信徒もこうした権利が認 められていることを知らず、特殊な法律用語が広範な適用をはばみ 、実際に権利が侵害されても、誰に、 どのように訴えればよいのか、分かりにくい点にあるかも知れませ ん。
*ひとくちメモ*