Sr.阿部のバンコク通信 ㊽常夏のタイ、冷えたビール… でも色々規制が

 常夏のタイ国、仕事を終えて、ぐっと飲む冷えたビール、喉元を過ぎる味わいは何とも言えません。メジャーブランドを飲めばタイ気分も満点

 タイの国産ビール、人気の1番は1933年生まれのSinghaシンハー(サンスクリットで「獅子」の意味)、そして、Changチャン(象)、Leoレオ(豹)、Tigerタイガー、Archaアーチャー(馬)など。すべて動物の名前、誰が名付けたのか、ぐっと新鮮な力が湧いてくる感じがします。

 ところで、この国にはビール販売の法律があり、販売禁止日時があるのです。仏教の祭日(万物祭、仏誕節、三宝節、入安居、出安居)と選挙日は禁酒。アルコール販売時間は年間通じ午前11時から午後2時、午後5時から午前零時に限られ、つまり、昼食時と夕食時です。禁止時間帯は、お酒の棚に紐が張られ、「販売できない」と表示されます。

 ある日、お客さまとの会食用にシャンパンを買おうと、商品を棚から取り、レジに並びました。時間がかかって、代金を払う前に販売禁止時刻に入ってしまい、いくらお願いしても、「レジに打ち込む時間を警察に調べられでしまうから、駄目」と聞いてもらえず、お手上げに。

 僧侶は、僧侶である限り常時禁酒。飲みたければ、僧侶をやめて還俗。もちろん未成年者も禁酒。志願者をお使いに出した時、未成年でないことを示す身分証を持って行かなかったので、手ぶらで帰って大笑いしました。

 なぜこのような厳しい規制があるか。タイの友人に説明してもらいました。タイの仏教の5つの戒律の第5に「禁酒」とあるのだそうです。殺すな、盗むな、姦通するな、嘘をつくな、そして酒を飲むな、と。「飲むと自分の理性責任を失う、そこから禍いが始まる」からだそうです。「少しなら…」と言ったら、「そこが難しいところよ」と。

 酒、タバコ類のCM無し、洋画でお酒が出てくる場面にはフィルターがかけられ、酒に弱い人を誘惑せぬよう配慮しています。

 合理化した都市社会で厳然と履行されているこのようなルール。特に仏や神の教えには至極素直に従う。社会が健康を維持するための「救いの要素」だと思います。

 今回のコロナ渦の中で、人々が文句言わずに至極単純にマスクを着用をする姿を、微笑ましく見つめている日々です。

    穏やかに、希望を持って、人間の「心の密」を失わずに生きて行きましょう。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2020年10月3日