・Sr.阿部のバンコク通信(65)「たけのこ」幼稚園、37年の歴史を閉じる!

 親友がバンコクで37年経営して来た日本人のための幼稚園が、3月末で閉園しました。来タイ以来、祈りながら見守り、励まして来た園の最後の卒園式、会場に心込めてお花を生け、友人の側で子供たちを見送りました。 本気で誠心誠意幼児教育に取り組んで来ただけに、感無量の友人、声を詰まらせていました。

 式後、思い思いにお庭で記念写真、お隣のお父さんにお祝いの挨拶をすると「実は私は32 年前の卒園児、小3の娘もこの園で学び、息子が最後の卒園児です」と。幼い時の楽しい思い出が、現在のタイ赴任、子供たちを父親の思い出の園で学ばせることに。

 園長先生と「子育てのステップ」で学んだ事、「アドラー」の教育に大変助けられた、と語る母親、最後の卒園式に嬉しい出会いでした。時の園長先生、何と32 年前の子供の名前まで覚えていました。

 親友が幼稚園を始めたのは、カトリックの幼稚園に通って学んだ楽しい思い出が生涯の貴重な宝となったから。

 「最初の募集はどうされたの?」と尋ねると、幼稚園の前にポスターを貼っただけで、「何も宣伝しませんでした」。申し込みは8人。父兄が自分たちで声をかけて子供たちを集め、35入の園児で開園した。

 「預かった子供を大事に、必死で取り組み、その気持ちが子供たちに、父兄に浸透して園が続いたのだと思います」「登園して泣く子が静かになるまで、腰が痛くなっても抱き続け、翌日、お母さんからパッと離れて登園したのを見て、うれしかったです。とにかく子供たちと真心込めて取り組んだ37年、捧げた思いは必ず滋養になっていると信じています」。

 タイ国に進出している日系企業 は昨年秋の統計で5865社、在留邦人は8万1187人で、米国、中国、オーストラリアに次いで第4位。タイ国の日本人人口の70%がバンコク在住で、子供たちの教育機関も比例して多い。

 バンコクの日本人学校は、1926年に「尋常小学校」として発足、1963年中学も併設され、長い歴史を持ち、現在の生徒2350人の私立学校。日本人向けの幼稚園も、インター併設を含め、バンコクに17園ありますが、入園希望者は以前よりも少なくなり、一部で”奪い合い”なども起きているようです。

 コロナ禍で日系企業も人口も減少してるのでは、と思いましたが、かえって増えてい るのには驚きました。子供たちを連れて日本に帰った家庭もずいぶんありますが、タイ社会での日本人の活躍は、今後もより良い関わりを保ちながら続く事でしょう。

 日本人の正直で、礼節を尊び、勤勉で向上心に富む気質(根性が竹のように根を張り、松の緑の勢、梅の香を漂わせる)が、これまで園が続いて来た一因だと思います。園の名前は『たけのこ』。園が閉じても、卒業していった方々の強くしなやかな成長を祈ります。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2022年4月4日