・Sr.阿部のバンコク通信 (77) どんな状況でも、慈悲の感性を輝かせて生きる

 お年寄りや障害者がたいせつにされる所には、和やかで幸せな雰囲気がありますね。タイの人々の中で生活していると、労り、付き添う介護の姿を巷でしばしば見かけ、うれしい気持ちになります。

 経済発展、少子化、若者の都心への流出、合理化消費主義の影響を受け変化の波が押し寄せてきていますが、家族コミュニティの人間関係は根強く、タイ社会の基盤になっています。

 これは仏教の教えに培われた、運命の受容、報恩感謝、人間の救いに深く結び付いた信仰の文化に因るものだと思います。通院治療を受けながら、ごく当たり前にさりげなく寄り添う人々の姿に接し、これまでになく感じ入っています。

 悲しいかな、時に私たちは、面倒で手間ひまのかかる仕事を、工夫して合理化する。そうしてはいけない分野にまで… 人の慈悲の感性を守り育てる大切な存在であるはずの年老いた人々、病人、障がい者、幼児に対しても…。冷たく硬い、味気も感動も無い世の中にならないようにしなければと、寒々とするニュースを耳にして、思わず合掌して詫び、祈ってしまいます。

 親しくしているカミリアン病院(バンコクのトンローにある、カトリック宣教師によって1956年に開設された私立病院)修道会のジョバンニ神父、レナート神父の感性と活動には敬服してしまいます。エイズホスピス、老人ホーム、重度の障がい施設を通しての活躍、貧しい住宅街への定期的な巡回訪問、医療奉仕。闇に光が灯され、慈しみの思いが伝わっていくようです。

 「神の名は『慈しみ』」と教皇様は言われました。その似姿に造られた私たちが、どんな状況においても慈悲の感性を輝かせて生きるように、マリア様のご保護に信頼して心底から願っています。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2023年5月5日