・Sr.阿部のバンコク通信 (68)街中にひしめく露店ー歩くだけで元気もらえる」

 バンコクの修道院の路地を出て大通りに出ると、路肩に露店が並ぶ界隈があります。いつもお世話になる時計と靴の修理の屋台、台車の八百屋、他にミシンのある繕いもの屋、バーベキューやラーメン屋。向かいのスーパーマーケットの前の道の両側にも、あらゆる種類の屋台がずらりと並び、歩くことのできるスペースはほんのわずかしかありません。

 何とも楽しく生き生きした生活感に溢れ、通るだけで元気をもらいます。タイの街中、至る所で味わえる”日本のお祭”のような雰囲気。これも観光スポットとして、外来客を惹きつけているのかも知れません。

 タイに来てうれしく感じたことのひとつは、街中の屋台と露店です。靴を持って行くと、すり減った底を取り替え、剥がれた底はしっかり縫って、ずっと使えるようにしてくれました(写真)。鞄も、ギターケースも、直してもらいました。時計修理をやっているチューンさんは、どんな時計でも、使えなくなるまで修理してくれます。

 子供のころから母に習って繕い物をしたり、一枚の生地から違ったデザインで見事に弟妹(私を含め当時6人)の洋服を仕立てる母の、ミシン掛けを手伝い、父には鋸の引き方、ちょっとした大工や電気工事も習いいました。工夫する楽しさ、喜びは、この歳になっても衰えません

 修理し、繕い、加工し、持てる力を目いっぱい使って、『ありがとう』『さょうなら』をする… 巷の人々との関わりの中で味わう喜びです。

 ところで私は、使い捨ての”消費主義”にずっと異議を唱え、黙々と、細やかな反抗を続けています。こと人の扱いに関しては、怒りが高じるばかりです。人をこよなく慈しみ愛するイエスの姿に一層惹かれ、「あやかりたい」と願っています。

 人ひとりを、ないがしろにしていい正当な理由など、あるはずがありません。神が独り子を世に遣わし、あがなって下さった私たち一人ひとり、慈しみの心を取り戻し、償いを捧げながら、深く悲しい世界の魂の傷を癒す日々でありますように、と心から祈ります。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2022年7月4日