・Sr.阿部のバンコク通信(61)「死者の月」の直前に召された友に

 諸聖人、諸死者の記念で始まる11月、大事な人生の節目を意識する機会です。

 数日前、タイに来て以来の親友が倒れて緊急入院、「術後の脾臓の大出血が原因で、30パックの輸血でも血圧が上がらない」と、友人から突然の連絡を受けました。死者の日とは? | カトリック中央協議会

 「母はカトリック信者なので、神父様にお祈りをお願いしたい」との仏教徒のお嬢さんの依頼で、友人が司祭に連絡を取り、病者の塗油を授けて祈っていただきました。はっきりと安らかな面持ちで頷いていましたが、間もなく意識を失い、2日後に旅立ちました。葬儀は、いつも通っていたバンコク市内のカトリックの教会で行われ、たくさんの親しい友人たちに見送られた暖かい旅立ちでした。

 葬儀はどの宗教でも大切な儀式で、どこでも歴史や宗教のしきたりに従って行われています。

 タイは仏教国で、人々は輪廻を信じ、亡くなった人が良い旅立ちをして、転生できるように、僧侶に祈ってもらいます。残された者が快く送り出せるように、悲しみや涙が故人の体にかかると、故人の魂が残した人を心配して輪廻できず、この世をさまようことになるので、そうならないように、と。魂は遺体と共に3~7日留まると考えられ、その後、供養を行い、故人を送り出すのです。

 故人の生前の功徳(タイ語でブン)によって転生が決まる、と信じられているので、人々は祈り、施し、善い行いに励み徳を積むのです。「このブンが、故人に届きますように」と願いを込めることで故人の供養にもなる。これはカトリックの「通功」の教えと同じなので、親しみを感じ、嬉しくなります。亡き親友は、心優しく人々に寄り添い、平素に徳を積んでいました。

 彼女とタイで知り合ったのは、仕事をやめ、手術ミスで介護が必要になったご主人のお世話を始めた頃。その後20数年、最期を看取るまで… お嬢さんが「パパのこんないい顔みたことないわ」と。ご主人と共に過ごした最期の数時間、親友は『夫への最後の贈り物』として自分の手で洗礼を授けたのです。「洗礼で浄められたお恵みですね」と連絡がありました。

 天の故郷に凱旋した親友を偲びながら、11月をスタート。おかげさまで、自分の人生のゴールに焦点を合わせる機会をいただきました。もうしばらく一緒に生きたかった同じ歳の親友に、心からの感謝と祈りを捧げ、天国で再会できるよう頑張ります。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2021年11月1日