10~11月の満月の夜、タイ国では美しい水の祭典が行われます 、今年は10月31日に当たり、ローイクラトーンと呼ばれんる水 に感謝を捧げるお祭りがタイ全土で祝われました。 4月のタイ正月に次ぐ祭日です。
リーダー格が拘束されたこともあり、勢いを失い、多少穏やかになった暴 徒の集会はさておき、人々はバナナの茎と葉に蓮などの花で素敵に 拵え、ローソクと線香を点した灯籠を手に水辺に赴き、感謝と願い を込めて河面に浮かべました。夜の水辺に流れる光る灯籠、 なんとも美しい光景です。
13世紀スコータイ王朝時代、川からの恵みに感謝し、王妃が美し い灯籠を川面に浮かべ流したのが始まりです。水位が最も高いこの 時期の満月の夜、ローイ(浮かべ流す)クラトーン(灯籠) のお祭りが行われるようになりました。
タイに住んでいると、水=ナム(นำ้)の付く言葉や熟語が非常 に多いことに気付きます。真心を「ナムチャイ(นำ้ใจ) =水の心」、優しい心の人を「水の心を持つ人」と言います。
基本的に農耕民のタイ国の人々、川や運河に沿って生活し、主要河 川を船で行き来して発展して来た国です。水の恩恵を平素に有り難 く思う気持ち、水との深い切っても切れない関わりと意識が、祭典 を身近に感じ祝っているのだと思います。魂の汚れを洗い流し、浄 めるという意味をも含むローイクラトーンのお祭り、安らぎ喜びを 感じ、素敵だな、と思います。
混乱の渦巻く世の中から、天に立ち昇る人々の祈りの燻り… 閉 ざされた天空がパッと開き、魂が命の呼吸をするローイクラトーン の様なお祭り、日本の巷でも楽しめるのではないでしょうか。
(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)
⁂写真は、タイ観光庁のものを使用しました=「カトリック・あい」