・Sr 阿部のバンコク通信㉓人目を気にせず・・でも「われ関せず」ではないタイ人の暮らし

    ある夕刻、書院勤務を終えていつものように渋滞の中を帰途に着きました。

  タイでの生活で、感心する事は多々あります。不便を改善せず、苦にせず、文句を言わず、面倒がらずやる、延々と待つ。日本人の感覚では一つ一つが苦情の対象。

  また、それぞれのやる事なす事に干渉しない。無関心と言えば語弊があるが、自分の衣食住を悠々と、人の目を気にせず思うままに営む。清々して、自分を出して生きられる環境、日本から来た人々が「『監視カメラから解放』された体験をしている」と言う、正にその通り。

  かと思えば、誰かが倒れれば必ず走り寄る、困った人への素早く、優しい配慮。タイの人々の「われ関せず」ではない気持ちに胸が熱くなります。

  その日も、バスを降り大通りから修道院のある路地に差し掛かると、ちょっとした人だかり。近づいて見ると、足首に怪我をしたおじさんを囲んで、どくどく流れる傷口を何とか処置しようと駆け寄ったところ。

 「何の役にも立てそうもない」と、通り過ぎようとした私。その日に限ってタオルを持っていたのを思い出し、彼の傷口にタオルをしっかり当てて、病院に辿り着くまでの応急手当。後は近所の人に任せて修道院へ帰り、カバンを置いて急いで夕飯の仕度。夕食時の話題の一つになりました。

  思い出すと、今でもうれしい気持ちになります。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2018年7月29日 | カテゴリー :