亜熱帯地方の果物、見たことのない珍しい色、形、味。タイに来て以来、 創造主の傑作を味わい感嘆しています。
人生初めて出会い味わった果物、例を挙げると、 ドラゴンフルーツ、マンゴスチン、ジャックフルーツ、ドリアン、 ローズアップル、グワバ、グゥアヤバノ、ランプターン、チコ、 ノイナー、カスタードアップル、サントール、アボカド、 パッションフルーツ、スターフルーツ、ライチ、パパイヤ、 タマリンド、ロンコン…
女王はドリアンです。「匂いは地獄で。味は天国」と言われ、 乗物他持ち込み禁止区域が多い。棘で覆われずっしりと重く、 落たてきたら頭蓋骨を破壊しかねない。
タイに来て間もない頃、 広報担当の故ピンピサン司教様の教区に招かれ、 東北タイのウドンタニに姉妹たちと初の列車旅行。 ベトナム戦争時に発展し、 米軍が戦闘地域の至近距離に待機していた基地のあった街。今は基地は撤去され、健康で平和な街並です。
司教館での会食の折、ドリアンが出され、早速、味わいました。「え? 天国の味?」。独特の匂いと食感、食べてムカーッと熱くなり、 吐き出しそうになりました。
「神さま、この何処が天国の味ですか?私は 今からここで生活し、働くのです」。再度食べてみたものの、やはり分かりません。 「このどこが美味しい天国の味か、教えて下さい」と 内心祈りながら、3度目の挑戦…「美味しい!」。感動しました。
私の感覚に無かった美味の世界でした。クリーミーな味わい、 地獄の匂いどころか魅力的な香り。ドリアンが 嫌いでずっと避けていた在タイ30余年の人に、 そんな体験を話したら、「シスター、良かったですね。 美味しさがすぐ分かって…。避けていた長い過去を、私は悔いています、残念!」という応え。
知らないものを「嫌い」という感覚で受け止めてはならない-自分の視野の外にある世界を意識すること-肝に銘じる体験でした。 主の創造された大自然の中で自分を解放し、 これからも「人生の大損失」を免れて生きて行きたいと思います。
(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)