・Sr.阿部のバンコク通信 ㊵”洗礼者ヨハネ”はラーメン屋さん

   タイに住んでいて実感する事のひとつに、人々の中に息づいている「超自然界への感性」があります。物質文明の陰で薄らぎがちな見えない世界を意識する「感知力」です。

 30万余の修行に励む仏僧、早朝裸足で巷を歩き、人々が跪座して捧げる奉納物を受けながら祈る僧侶、経済成長の波に浸蝕されないで営まれている。悪霊に非常な恐れを抱き、お布施や善行に寛大で…偽善なしでさり気なく、貧しい人も、裕福な人も、それ相応に励むのです。

 カトリック界も同様、赦しや聖体の秘跡に親しみ、祝福や聖水を大事にし、死者生者のためのミサ依頼、喜捨に励み、聖像に触れて祈り、見えない恵の世界に開かれた素朴な信仰心を感じます。

 ラーメン店を営むメタさん、見事なタイミングで臨終の人々を訪問し、見ず知らずの人にも、宗派にかかわらず、イエス様の思いで寄り添い、天国への花道に導いているのです。よく書院に立ち寄り、『これから臨終者の見舞いに行きます、シスター、お祈りお願いします』と頼まれます。

 ある日、彼は、遠方の末期ガンの臨終者を訪ね、司祭を呼んだ。彼女はマリアの名で洗礼を受け、聖体と病者の塗油の秘跡を受けて、2日後に亡くなった、と話してくれました。

 死に臨む人に赦しと安らぎ、信仰と希望を灯して、天国に旅立つのを見送るメタさん。すでに200余の人を洗礼の恵みに導いたと言います。彼の霊名は洗礼者ヨハネ、まさに現代社会の高層ビルの谷間、チャオプラヤー川の辺りで、見えない神の国、恵みの架け橋として生きる洗礼者です。

 「見えない神の次元を現実に生きる、凄いお呼びがかかった人生」-タイの人々の中で改めて使命を噛みしめています。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

(写真は「メタさんの連絡を受けた司祭が、臨終の床にある女性に洗礼を授けた」)

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2020年2月4日 | カテゴリー :