・Sr.岡のマリアの風㊶”大量出張”で体調を崩して感じた「神のいつくしみの心」

 5月初めから、国内外 一連の出張が続いた。ローマ、大坂、再びローマ、そして釜山(韓国に、東京に…。その間に、修道会の行事が入り、じっくり考える間もなく次の務めに…という感じの日々。今、7月末。やっと一息。次の「大量出張」は、10月、そして来年2月から3月にかけて。今を「充電」の時期として、ありがたく過ごしている。

 シナイ山のふもとで、神の「ことば」を受け入れ、神の民となったイスラエルの民。しかし、神が約束した土地(「約束の地」)に入るまで、40年間の荒野の旅が「必要」だった。神ご自身の顕現、奇跡だけでは十分ではない。神のことばを聞くだけでも十分ではない。それを「生きる」ことのむずかしさをとことん知り、自分たちの弱さを知り、「そんな民」を選び、望み、大切にし、導く神の、人知を超えるいつくしみ、忍耐深さを「体験する」…。そのために四十年間の、荒野の旅-神との民しか存在しない空間と時-が必要だった。

 民は、神のために地上の「住まい」-幕屋-を作るように求められる。神が幕屋に留まるとき、民はその周りに野営し、神が望む時、幕屋をたたんで旅に出る。神のことばを熟考し留まる時、そして旅する時。共同体にとどまり、神のことばを思い巡らす時。そして、旅-出張-する時。神の望むリズム、タイミングで。

 5月から始まった「旅」の途中で、風邪をひき、体調を崩した。なかなか治らず、ぐずぐずと、疲れのような、具合が悪いような感覚を引きずりながら、6月末から7月初めにかけて、ローマ、釜山へと長期出張の「旅」に出かけた。

 その旅の終わりの独り言…

 今回の出張、「手放す」ときに初めて分かる、神さまの祝福の豊かさを経験しました。風邪を引いたまま出かけ、自分のイニシアティブで行動できず、計画していたことが軒並み実行されず、ひたすらロザリオを唱えながら「主よ、あなたのお望みが行われますように」と祈りました。

 こんなに「無心に」ロザリオを祈り続けたのは、久しぶりでした。イニシアティブをすべて神に委ね、神の「思い」の中に、わたしが入ることが出来るように、その「思い」を行い、生きることができるように、と祈りました。

 あふれるほどの、人々、または出来事との「偶然の」出会い。深い喜びと感謝の中で、なかなか自力では謙虚になり切ることが出来ないわたしのために、体調不調で「手放す」ことしか出来なかった、その「状況」を造り出してくださった神のいつくしみの心を、感じました。

 手放すことによって、わたし自身、気づかぬうちに、わたしの空間、時間を、神に差し出すことを学んだのでしょう。無償で「降りてきて」くださる神。その神の「住まい」として、わたし自身を差し出す、その「状況」を、神自身が造り出してくださった、と言えるのかもしれません。

 来年(2020年)9月に開催される教皇庁立国際マリアン・アカデミー(PAMI)主催の4年に1回の「国際マリア論会議」で、アジア・オセアニアのマリアン・アカデミー(AOMA)の存在を正式に紹介したい、と ステファノ神父(PAMI長官)、デニス神父(AOMA責任者)は考えています。そのための、来年2月末から3月初めにかけてのローマ、 ルーマニア訪問、3月末の韓国訪問。主のみ心に沿うならば、実現されるでしょう。

 神は何を、この小さなわたしたちのために準備しているのでしょう。わたしが確信できたのは、神は決して、「わたし」が、「あなた」が、独りきりで頑張ることは、望んでおられない。わたしたちが神に「場、空間」を差し出すなら、その「場、空間」は、出会いの場、対話の場、和解の場となっていくのだ、ということです。

 共に歩んでいくためには、「あなた」に「耳を傾ける」ことが必要です。考え方、やり方が異なる相手を尊重し、忍耐強く、謙虚に「耳を傾ける」ことは、簡単ではありません。でも、それこそ、まさに、神ご自身の、わたしたち、ご自分の民に対する「態度」です。天地創造の初めから、変わることなく。その、神の「姿-イメージ-」の中に造られたわたしたち人間。わたしたちの存在の奥深くに刻まれている、神の姿。
「神を運ぶ者」としての神の民の召命を、救いの歴史の中で、唯一、ユニークに生きた、イスラエルの娘、ナザレのマリア。「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください」(ヨハネ福音書2章5節)と、わたしたちに御子イエスを示し続ける母マリア。彼女は、「わたし」ではなく、「あなた you」、そして、大文字の あなた You-神さま-」を、自分のいのちの真ん中に置き、人々に運ぶ、「母・花嫁」として呼ばれた神の民の、美しい実り。

 PAMIが模索している「平和、対話、和解への道」としての神の母マリアの姿は、キリスト諸教会ばかりでなく、諸宗教、すべての善意の人々との対話へと開かれています みなさまのお祈りに深く感謝しながら、祈りつつ。

(岡立子=おか・りつこ=けがれなき聖母の騎士聖フランシスコ修道女会修道女)

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2019年7月27日