・Sr.岡のマリアの風 ㊿国際マリアン・アカデミーの初の「ビデオ会議」

 PAMI(教皇庁立国際マリアン・アカデミー)と、世界中のさまざまなアカデミーとの、はじめての「ビデオ会議」。

 PAMIのIT担当、ダニエルから「ミーティングへの招待」(Google Meet)が来て、それをクリックして、またクリックして…何とか、ミーティングの「中」に入る。

 「シスター・ルカ(わたしの修道名)、こんにちは(または、おはよう)!」と、すでに「中」にいるメンバーたちが声をかけてくる。「日本は夜の10時、だから、こんばんは!」とわたし。「もう寝る時間じゃないか」、「顔が見えないよ、画面を調整して…。そう、そのくらい…」。

 PAMIの長官、先輩のステファノ神父:「誰がアジア部門の報告をするの?君?デニス神父?」。

 わたし:「デニス神父」「OK ……そうこうしているうちに、次々に参加者が「中」に入ってくる。恩師サルバトーレ・ペレッラ師はIT世代ではないので、同じ修道会の若い神父がそばにつ
いている。短気なペレッラ師が「なんだこれは?えっ?どうするって!?」と叫んでいるのも聞こえる。

 「若い神父」は、辛抱強く「こっちを押してください」とか「それを触ってはだめです…」などと言っている。

 ITのコーディネートをしているダニエルが「話している人の声が聞こえるように、その他の人のマイクは、こちらで消しているので了解ください。発言したい時は、画面下のマイクのアイコンをクリックしてください」と説明する。

 ローマ時間午後3時。日本時間午後10時に、ステファノ神父の、「いいですか?始めましょう」の声で開始。だいたい40名くらいの参加。会議の途中で、アジア部門の長官、デニス神父も入ってくる。よかった。

 最初に、ステファノ神父を含む4人から成る「PAMI作業グループ」(彼らは毎日集まって連絡を取り合っている)から、今日の集まりの理由、目的、内容の説明と、PAMIの現在の取り組みの報告がある。

 ステファノ神父は、昨年 2019年)12月4日、PAMI創立60周年に開催された会議への、教皇フランシスコのメッセージを思い起こす(以下、教皇メッセージの一部試訳)。

 「アカデミー」は、「知ること(知識)」が奉仕になる場所です。なぜなら、「知ること」-それは共に働くことから生まれ、共に働くことへと導きます―が無ければ、真の統合的な人間の発展はないからです。「アカデミー」は、その固有な分野において、シノダリティー(共に歩む)の経験、範模です。それはまた、教会の現在に属する、また教会の使命に属する福音宣教の力です。そして、今日わたしが授ける「賞」が、福音と文化の間の、つねに豊かなきずなを祝う招きとなるよう願います。

 パパの招きを受けて、アカデミーは「出会いの場」となるべきだ、とステファノ神父は強調。まざまな文化、民族、宗教の人々が、平和を目指し「対話するために」出会う場所。そして、わたしたちを一致させるのが聖母マリアである、と。

 現在、PAMIは、“Maria: Via di Pace tra culture”(マリア:諸文化間の平和の道)と題した一連の講話を、イスラム教との対話の中で進めている。日本ではあまり知られていないが、イスラム教徒はマリアをひじょうに崇敬している。実際、彼らの聖典『コーラン』はマリアについてのエピソードを多く語っている。世界の聖母巡礼地には、たくさんのイスラム教の女性たち、特に母親たちが訪れている。マリアの中に、「いのち」を大切に守り育てる母の姿を見ながら。

 各地域のアカデミーからの発表の中で、アメリカ合衆国からプロテスタント教会との対話、わたしが昨年訪れたルーマニアからは、東方教会や東方典礼の諸教会との対話、レバノンからはイスラム教徒の対話についての活動が報告された。

 さらにステファノ神父は、わたしたちは「小さなグループ」だけれど(聖母崇敬は大きな現実であるけれど、学問としてのマリア論はイタリアでもマイノリティーだ)、世界に向けて開こう、と呼びかけた。信徒たちへの、また他の宗教の人々への、マリアについてのカテキズム(基本的な教え)を差し出しながら。

 それらのことも含めて、PAMIの当面の課題は、将来の歩みのための「コーディネート(調整)」と「継続」。そのためには、世界中の「アカデミー」の対話と協力が必要。そこで今回はまず、各アカデミーの報告に耳を傾ける機会となった。

 こうして、16か所のアカデミーからの現状報告(フランス、スペイン、ドイツ、ポーランド、クロアチア、アメリカ合衆国、カナダ、イタリア、アジア、コスタリカ・ベネズエラ、ホンジュラス、ブラジル、アフリカ、ルーマニア、レバノン…)。

 何しろ初めての経験なので、しょっちゅうダニエルが出てきて、「あなたの声が聞こえません、画面の下のマイクのアイコンを…」とか、「いっぺんに話すと聞こえないので、あなたの声だけ残します…」、とか指示している。

 わたしのパソコン画面にも、いろいろな信号(?)が出てくる。随時、「今、○○さんが入りました」「○○さんが退出しました」、「現在、38名が参加しています」…。「コメント欄」には、「今の話、賛成!」「その企画、協力します」など、自由なコメントが飛び交う。なかなか「ライブ感」あふれる会議だ。

 イタリアからは、イタリアマリア学会の責任者、ペレッラ師が熱演(?)。昔の授業を思い出しながら、なつかしく聞く(「ペレッラ神父、ブラボー!」などとコメントが入る)。「マリア論研究一筋」の情熱、健在。師がこれだけ熱意をキープしているのを見ると、弟子のわたしも刺激される。このような師をいただいたことに感謝。

 ベネズエラからは、聖母巡礼地における「愛のわざ」―貧しい人々への毎日の食事の提供など―についての報告。ステファノ神父が「聖母のセンター」は、「真(学術)」・「美(芸術)」だけでなく、「愛(実践)」の、三つの要素のバランスが大切、とコメント。

 アメリカ合衆国からは、PAMIとの協働の、インターネット上の「Mariapedia(マリア事典)」の企画についての報告。これは、まさに各地のアカデミーが、自分たちの場所の聖母巡礼地、聖母崇敬…に関する情報を提供することによって作られていく、まことに創造的な事典だ。初めは英語だが、各国のアカデミーがそれぞれ自国語に訳していけば、より多くの人に届くだろう。

 また、以前から話があった、PAMIのHPに、各アカデミーの活動を各国の言葉でアップする計画の確認もあった。例えば、日本人が、

 一つ一つのアカデミーで出来ることは限られているが、こうして、世界中のアカデミーとの協働、またそれを調整するPAMIとのつながりの中で、新しい可能性が見えてくる。

 会議はあっという間に予定の二時間が過ぎる(眠くなるのではないかと心配したけれど、興味深く、二時間、集中できました)。「まだ残りたい人はどうぞ」とステファノ神父。わたしはこの時点で「日本は夜中、またね。みなさん、ありがとう」とコメントして「退出」する。

 信徒たち、人々に、「健全な聖母信心(崇敬)を考慮した、健全なマリア論(学問)」を提供すること。ステファノ神父が強調する、PAMIの大切な役割の一つ。パンデミック「後」の活動のため、今は日々、研究を怠らないことがわたしの務めだろう。

 翌日、PAMIの「作業グループ」メンバーと、デニス神父に、感謝のメッセージを送る。デニス神父が、ミーティングの内容を、アジア地区のアカデミーのメンバー、協力者、友人たちに知らせるために要約してくれることになった。感謝。

 パンデミックのために、来年(2021年)9月に延期された、PAMI主催、第25回、国際会議は、“Maria tra teologie e culture oggi. Modelli, comunicazioni,prospettive”(今日のさまざまな神学、文化の間でのマリア。モデル[範型]、コミュニケーション[伝達]、展望)というタイトルで開かれる。アジア部門では、デニス神父が、Nuove frontiere: Maria nel mondo asiatico(新しいフロンティア:アジア世界におけるマリア)と題して発表する予定。

 今年の秋か冬には、ローマで直接、ステファノ神父、デニス神父と話す必要があるだろう。来年二月には、再びルーマニアを訪れる予定である。今、出来る小さなことを積み重ねていきたい。祈りつつ。

(岡立子=おか・りつこ=けがれなき聖母の騎士聖フランシスコ修道女会修道女)

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2020年5月1日