あらためて、戦争で亡くなられた多くの方々の永遠の安息をお祈りいたします。戦争のために人生の道筋を大きく変えられた方々も多くおられるでしょうし、心身に重荷を負われた方も多くおられたことと思います。夏の暑さの中に佇むとき、多くの方の無念の思いが、天に昇る上昇気流のようにそこここに満ちあふれていることを感じます。その思いを祈りとして、いつくしみ深い御父にささげます。
歴史を振り返るまでもなく、わたしたちは常に平和を語りながら同時に戦いを続けています。いのちを守ることを語りながらいのちを奪い合っています。自分ひとりが同時にその二つの行為をしていなくとも、わたしたちは一匹狼として生きているわけではなく、世界中の人と繋がれて「共通の家」で生きている仲間です。なんともいえない矛盾の中で、わたしたちは歴史を刻んでいます。
「戦いを止めよ」と叫んだからと言って、それですべてが解決することはありませんし、複雑な国際関係がその一言で修復されるわけでもありません。そこには様々な側面からのありとあらゆる種類の努力の積み重ねが不可欠ですし、その積み重ねはあまりに膨大で、人間の手に余るものなのかも知れません。政治、経済、そして学問などの様々な分野での努力を積み重ね続けるためにも、そこには誰かが理想を語り続けなければなりません。たとえそれが夢のようであっても、目指すべき理想を語ることを続けたいと思います。「戦争は人間のしわざ」だからです。
(菊地功=きくち・いさお=東京大司教「司教の日記」から)