・竹内神父の午後の散歩道⑬「さぁ、主のもとへ行きましょう」

11月30日は、聖アンデレ使徒の祝日。彼は、イエスによって召された12人の弟子の一人、ペトロの兄弟です。

 バロックを代表するイタリアの画家、カラヴァッジオ(1571-1610)の秀作の一つに、‶聖アンデレの十字架〟という作品があります。左上方から光が当てられ、明暗のコントラストが、特徴的です。この明暗は、人間の、あるいはこの世の明暗を現しているのでしょうか。

 彼は、聖イグナチオ・ロヨラの霊操の影響を受けていた、と言われます(驚きです)。例えば、彼は、イグナチオが『霊操』の中で、祈りの手ほどきとして語る「場所の設定」や「五官の適用」などを、絵画の手法として取り入れているそうです。それによって、彼は、絵を観る人を聖アンデレの死の観想へと招きます。

人間を漁る者にしよう

 ある日、イエスは、ガリラヤ湖畔を歩いていました。その時、彼は、湖で網を打っていた二人の兄弟に目を留めて、こう語ります――「私に付いて来なさい。人間をとる漁師にしよう」(マタイによる福音書4章19節)。その二人とは、ペトロと呼ばれるシモンとアンデレです。イエスは、また、網の手入れをしていた別の二人の兄弟を招きます。ヤコブとヨハネです。イエスの招きは、このように、極めて日常的な場面で行われます。

 「私に付いて来なさい」ーイエスの招き。ペトロとアンデレは、すぐに網を捨てて従い、ヤコブとヨハネは、すぐに舟と父親を残してイエスに従いました。「すぐに」ーイエスの招きの圧倒的な力と、彼らののなさが、よく表れています。イエスに従うということは、しかし、容易なことではありません(マタイによる福音書16章24節、19章27節参照)。

あなたをイエスに会わせましょう

 ‶アンデレ〟という名前は、(‶男らしい人〟という意味のようですが)、福音書においては、4回登場します。彼は、最初、洗礼者ヨハネの弟子でした。しかし、彼は、ヨハネから「見よ、神の小羊だ」とイエスを指し示され、イエスの弟子となります(ヨハネによる福音書1章36-37節)。

 アンデレは、いったい、どのような人物だったのでしょうか。彼は、ペトロをイエスのもとに連れて行きます(ヨハネによる福音書1章42節)。彼は、イエスが五千人に食べ物を与えたとき、五つの大麦のパンと二匹の魚を持っていた少年のことを、イエスに告げます(6章8-9節)。彼は、また、イエスがエルサレムに入る時、イエスに会いたがっていたギリシア人をイエスに取り次ぎます(12章22節)。

 さらに、オリーブ山では、ペトロ、ヤコブ、ヨハネとともに、終末のしるし(世の終わり)について、イエスに尋ねます(マルコによる福音書13章4節)。彼は、誰かをイエスのもとに案内する、そのような人だったようです。

 伝承によれば、アンデレは、アカイアのパトラスで、‶X形の十字架〟に掛けられて殉教しました。そのためでしょうか、先の‶聖アンデレの十字架〟において、彼の足は、十字に交差しています。ギリシア教会において、彼はまた、「プロトクレートス」(最初に召された者)と呼ばれるそうです。つまり、彼は、ペトロよりも先にイエスに招かれた人物、と考えられていたようです。

 「信仰は聞くことから、聞くことはキリストの言葉によって起こるのです」(ローマの信徒への手紙10章17節)、パウロは語ります。アンデレは、まさに、それを生きた人物でした。古い網を捨てて新しい網(神のみ言葉)を携え、十字架への道を歩みました。その十字架上から、彼は、今もなお、この不確かな世界にう人々を招きますー「さあ、主のもとへ行きましょう」

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2021年11月30日