・三輪先生の時々の思い ⑯コロナの危機は「英雄待望論」

 最近はコロナで暮れてコロナで明ける日が続いている。新型コロナウィルス感染症のことである。

 手元の『広辞苑』には「太陽大気の外層…」として、天文学用語の第一義のみが示されている。情報伝達手段の先端をゆくGoogleで「コロナ」と引くと「新型コロナウィルス感染症CONVID19」と出る。

 ウィルスとしては人類のすぐそばに、体内にもいるのに、コロナ本来の意味の「太陽大気の外層」ととらえれば、1億4960万㎞隔絶している。いわゆる「天文学的数値」である。1光年=9兆5000億㎞として、実に1581光年となるのである。

 感染症CONVID-19としてのコロナに打ち勝つのには「不要不急の外出を避け、外出したら帰宅時によく手を洗う」という自衛策が推奨されている。多種多様な個々人の集合体である現実の人間社会がこれでコロナ禍を完封できると信じているものはいないだろう。

 あとは神頼みか。いや偉大なる政治指導者への待望だろうか。そこに民主主義の陥穽がある。人々は何時の間にか独裁者を選出してしまっているのに気付くだろう 。しかし、時すでに遅し、後の祭り、である。

 コロナがもたらす危機は医療に限らない、もっと深甚なる危機は「英雄待望論」に乗ってやって来る、と知るべきである。

( 2020. 3. 31記)

(三輪公忠=みわ・きみただ=上智大学名誉教授、元上智大学国際関係研究所長、プリンストン大学・博士)

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