第一部 教会の生活
教会と教会法
Q カトリック教会の法律は、誰が決めるのですか?
A たとえば、「普遍法」、「特別法」、「典礼法規」の制定者は教皇。「局地法」はその地域を治めている司教協議会や司教です。 ***************************************
一口に法律といっても、カトリック教会にはさまざまな種類のものがあり、それによって制定する人が異なります。カトリック教会全体におよぶ規律を扱う法律は「普遍法」と呼ばれ、制定するのは教皇です。使徒座(聖座とも言います)の公報誌である『使徒座官報』に法律として掲載されると、普遍法として公布されたことになる(7条、8条1項)と定められています。
現在、普遍法にはラテン教会を対象にした法典(1983年公布)と東方カトリック教会を対象にした法典(1990年公布)の二つがあります。日本に住むカトリック信者の多数がラテン教会に属しており、ヨハネ・パウロ2世が公布した『カトリック新教会法典』(有斐閣)は日本語にも訳されています。通常、「教会法」と呼ばれているのは、この本のことです。
教会の法律には、普遍法のほかに「特別法」と呼ばれるものがあります。教皇はどのようにして選ばれるのか(いわゆる「コンクラーベ」に関する規定)、あるいは教皇庁の組織はどのように構成され、誰がメンバーを任命するのかなど、特殊な機会や分野において適用される法律で、制定者は教皇です。
聖人の位にある、と宣言するためにはどのような手続きを経るか、という「列聖」も、「教皇特別法で扱われる」(1403条)と定められており、現在の手続きは、1983年に交付された47項目の細かい規定から成るものですが、『カトリック新教会法辞典』には載っていません。聖人になるのも、聖人にするのも、簡単ではありません。
その他に一定の地域、たとえば国や地方、ある教区にだけ適用される法律を「局地法」と呼び、立法の権限はその地域を治めている司教協議会や司教にあります。教区長である司教は、自分の教区では立法者でもあるわけです。また、修道会や宣教会の規則を「固有法」と総称しますが、会の創立者などが書き残した会憲や会則と呼ばれる基本法の中に、会において誰が立法権を持っているのか(たとえば、総会、総長と顧問会など)が定められています。
さらに、ミサや洗礼などの秘跡の規定、葬儀などの準秘跡の執行のための儀式書にある規則は、「典礼法規」と呼ばれ、全教会を対象に、教皇が制定します。
これらに、教会と国家の間で結ばれる「政教協約(コンコルダート)」(協約を結ぶ主体はバチカン市国でなく、聖座です)を加えたものの総体を指して、広義では「教会法」と読んでいます。
一口メモ
『カトリック新教会法典』には1752条が載せられています。旧法典よりも662条少なくなりました。世界の180を超える国や地域に10億人を超える信者を抱える教会の法律、という点を差し引いても、数が少ないとは言えません。信仰生活を送るのに、福音書だけでは足りないのか、という批判が聞こえてきそうです。
(ドンボスコ新書・菅原裕二著「教会法で知るカトリック・ライフQ&A40」より)