・Sr.阿部のバンコク通信 (81)朝夕二回、国歌演奏を聞きつつ直立不動ー国民に”誇り”が生きている

 朝8時の時報で、道行く人々がピタッと動きを止めました、パントマイムの一場面の如く。タイに来て初めて出会した時は何事が起こったのかと思いました。

 タイ全土の街中にタイ王国の国歌が流れ、国民は起立不動の姿勢で敬意を表するのです。朝8時と夕6時、毎日40秒のこの儀礼の瞬間を国民が共有する、この国民を結ぶ習慣は、タイ国に長年住んで人々と共に生きている私も、考えさせられています。この国が、どのような事態になっても、誇りと責任を持って守る… そんな覚悟を感じてなるほどと頷けるのです。

 タイの現在のチャクリー(ラマ)王朝は1782年、ラマ1世により現在の首都バンコクに遷都し建国されました。ラマ9世(プーミポン•アドンヤデート国王・在位70年)が崩御された後、ワチラロンコン王子が跡を継ぎ、ラマ10世として今に至っています。

 ラマ7世下で 、立憲革命により1932年絶対王政から立憲君主制に移行し、1939年ラマ8世により、国名が「サヤーム(สยาม=Siam)」から「タイ王国(The Kingdom of Thailand)」 に変えられ、それまで の国王を讃える「国王賛歌」に代わって、現在の「タイ国歌」が採用され、朝夕、タイ全土に流されることになりました。今も、その時間になると、拡声器などで国歌が流され、国民は「気をつけ」の姿勢で敬意を表します。国旗台がある所では、午前8時に国歌と共に国旗が掲揚され、午後6時に国歌が流れる中で降ろされます。

 厳かな国王讃歌は、国王に関わる行事、映画、演劇が始まる前にも、流され、観客は外国人も含めて一斉に起立します。私自身も起立し、口ずさむことがあります。自国と国民を思い、平和を願い、勇気を持って毅然と生きる…国歌の文句を考え「気をつけ」をしながら、私もタイの国王陛下と国民のために祈りを捧げます。

 祖国日本の為にも、普段の生活の場にこのような機会を作りたいなと思います。日本を偲んで祈り、合掌する手にグッと力が込もってしまうこの頃です。
愛読者の皆さん、残暑厳しき折、お身体を大事にお励みください。

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

 

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2023年8月30日