・Sr.阿部の『乃木坂の修道院から』㉓「体だけでなく、魂にも、土壇場で湧き出す力が与えられている」

 人間、苦境で嘆き始めると落ち込んで行きますが、「さて、ここをどう乗り切るか」の心境に切り替えると、創意工夫が生まれ、生気が湧いて来るから不思議ですね。長い私の巡礼人生、岐路に立っては、内から新たに奮起させられ、創造主が込めて下さった不思議な力に導かれて今日まで歩んで来ました。

 窮地に立ち、万事休すの状況に追い詰められると湧いて来るエネルギーがあるのだそうです。

 以前 茶碗が持ち上げられなくなり左手首に支障を来した時、カイロプラクティックの鍼治療院に通ったことがありました。「ちょっと通ったら治る」と軽く考えていましたが、長い間の使い過ぎが祟ったようで 、1年近く治療が続きました。

 その間、治療院の奥で鍼のベテラン老先生が患者さんに話しているのを耳にしました。「ツボに命中させられる、まだ腕は大丈夫だ。人間の体の経穴(ツボ)に鍼を刺すとモルヒネを出し、治癒するんですよ」と。自然に備わった鎮痛物質が治癒する、体というのは凄いものだ、と感動してしまいました。

 同じように、魂にも土壇場で湧く力が備えられていて、追い込まれ極限の境地で発揮するエネルギーがある。逃げていては、宝の持ち腐れ、奥深くに秘められた才能は埋れたままになってしまう。もったいないことです。

 そんな確信がいつも胸のうちにあって、自分にも他人にも過干渉、過保護にならないように自戒して生きて来ました。

   思い返せば、自分でもびっくりするような閃きの発揮に驚く事が多い人生でした。50 歳までの宣教に走り回った人生、その後のタイ国に派遣されてからの30年は、本当にAmazing Grace 、「えぇっ」と驚く仕事をやって来ている、創造主に賛美と感謝あるのみです。

 タイに派遣され、生活習慣も文化も違う姉妹たちと共に生きる中で、姉妹が苦しんでいる時、声をかけ、寄り添う衝動に駆られる事がありました。そっと祈りで見守るのは、なかなか難しいのですが、苦しみのるつぼの中で呻吟する姉妹を、一線を越えず、じっとそばに居て、神の導きを信じて待つことがありました。それは神様と人間に秘められた力を信じ、姉妹への敬愛の体験でした。神様と私だけの秘密ですが、人間同士が密に生きる環境の中で役立つかもしれませんね。

 復活祭、人類の罪を負い、十字架の死をもって贖われたイエス、重い石が取り除けられて、命の勝利を祝う復活の秘義を新たな感動で味わいました。

 私たちの魂に宿された命の種が成長し、日々創造のみ業に与る人生を生きて行きましょう。「Amen Alleluia !」と口ずさみながら。

(阿部羊子=あべ・ようこ=聖パウロ女子修道会会員)

 

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2026年4月7日