・Sr.阿部の「乃木坂の修道院から」⑬ タイ語訳の日本の漫画が、シスターの誕生につながった!

 5月31日、タイの聖パウロ女子修道会の3人目が終生誓願を宣立し、うれしい、待ちに待った恵みの日でした。1994 年設立から31年目、向かいの聖ミカエル教会の感謝のミサの中で、聖パウロの宣教の熱意を生涯かけて生きる”パオリーナ”が誕生しました。

 チェンマイ教区出身、シスター・マリア・マナッサナン(通称シスター・ピム)。なんと召命のきっかけは、タイ語訳日本の漫画。「シスターが出された漫画の本、全部読みましたよ。初聖体の準備も漫画本で…」とシスター・ピム。彼女が住んでいたチェンマイ県メチェム山岳のピムのパークウェイ村まで、漫画宣教は辿り着き、召命に繋がったのです。

 1993年暮、タイに派遣された私が、タイ語を学びながら、宣教の道を模索していた折、タイ語の日本の漫画を夢中で読んでいる子供たちに出会いました。これだと直感、日本の女子パウロ会の漫画本版権使用を交渉し「ベンハー」2巻、「クォヴァディス」3巻「白い鳩のように」を翻訳出版。次いでサンパウロの「はるかなる風をこえて」3巻「たとえばなしきかせて」を各5000冊出版しました。親しくしている日本の友人のタイ人のご主人の伝手で印刷会社の社長、日本漫画タイ語出版社のベテラン翻訳者、私のために日本語通訳者まで集まり相談。みごとな協力の輪が広がり、漫画による宣教がスタートしました。

 電波の届かない山岳部の奥地まで漫画本は届き、予想外の宣教の道が開けて驚きでした。最初の「ベンハー」出版はフィルム使用、エジプトの友人パイロットが現地まで運んでくれました。宣教の応援の手は止まる事がありませんでした。

 その後、講談社の漫画聖書物語(旧約/新約)をバンコクの日本語の本屋さんで見つけ、ぜひとも出版したい、と計画を暖めていました。帰省の際、文京区の講談社を訪れ、海外出版の版権使用契約を結ぶことが出来、各5000部出版しました。これもまた、六本木の有名人の行きつけのバーでバンドをやっていたタイで知り合った友人が社長と親しく、手紙をfax してくれたのがもとで、実現したのでした。

 漫画30点、単行本18点、視聴覚21点、数えきれない協力者と援助の手で、タイでの宣教生活は、実に神様の心憎き摂理の御手が練った”仕事”を体験した日々でした。

 聖パウロの「私は自分が信じてきた方を知っており、私に委ねられたものを、その方がかの日まで守ることがおできになると確信」(新約聖書テモテへの手紙2・1章12節=「聖書協会・共同訳」)し、主の福音を宣べ伝え続けます、来し方をバネにして…、Deo  Gratias!

(阿部羊子=あべ・ようこ=聖パウロ女子修道会会員)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年6月5日