タイの人々は進取の気性に富み、新しい物事に興味を持ちすぐ取り入れる。「気持ちが若いなぁ」といつも感心していました。そんな気風の中で長く生活して、「頑固な私のこだわり性も随分影響されたなぁ」と感じています。
タイ国のスマホ普及率は人口を上回る123% 、使い勝手もよい。ある日、バンコクの電車の中で、スマホを鏡にかざして手話でカメラ通話している姿に出会いました。本当に嬉しい驚きで、やった!と、思いました。聾唖の障害を持つ人々にとって便利至極なスマートフォン、懐かしい長崎の聾唖友人仲間を思い出しました。
40 年前、長崎勤務の頃、仕事の合間に手話講座に通い、勉強していた時のこと。ある日、「カトリック信者の多い長崎にも聾唖者がいるはず、調べたけど見つからない」と26聖人記念聖堂の故林神父様が書院にいらしてポツリ。ほんとにね、と思いました。
それから聾唖のカトリック信者を探し、見つかりました。10余人。折良く手話の勉強会で、名古屋から転任された神言会の飯野神父様に出会い、話が決まり、急遽、手話ミサの準備を始めました。故結城了悟神父様のご配慮で、26聖人の記念聖堂でミサと初の集いをすることになり、10数通のお知らせの手紙を出しました。
そして最初の手話のミサ。本当に、嬉しい暖かい集いの誕生でした。私は”助産婦”、誇りに思っています。名前は「主和会」と名付けられました。里脇枢機卿様の承認を得て、指導司祭もいただいて典礼行事には手話通訳が付き、正義と平和全国大会で

も手話通訳を付けるなど、毎月の手話ミサ、勉強会、 小教区をめぐっての手話ミサ… 、ボランティアも増え着実に成長しました。10年後、佐世保地区で「みことば会」も誕生。
しっかりと歩み始めた主和会を神様にお任せして、私は大阪に転勤、次いでタイ国に派遣されて30年。今年は主和会40周年(みことば会30周年)、11月4日、お二人の大司教様をお招きして、長崎西町教会で感謝のミサと祝賀会が行われました。タイでの宣教を終え日本に帰った私への神様からの素晴らしい贈り物でした。久しく手話を使っていませんでしたが、皆の顔を見ると嬉しくて、手が動き出しました。心のこもった喜びに、はち切れそうな出会いでした。
心の手と手で語らい、結ばれ、神様からの愛と喜び、希望の火が人々の心に灯されますように。スマートフォーンを大いに活躍させて、素敵なクリスマスを準備しお迎えください、マラナタ。
(阿部羊子=あべ・ようこ=聖パウロ女子修道会会員)