タイを去るひと月前、HIV/AIDE 患者をケアする「カミリアンセンター」(ラヨン県)を訪問。120余の子供から大人の明るく笑いと思いやりが漲る大患者家族で、3人の神父が父母役で元気な人が炊事や洗濯など家事を担当、子供たちは学校(以前は拒絶)に通っています。
カミリアン病院修道会の神父、修道士さん方とは、同じイタリアの創立で自国語の次に親しめ、タイ滞在30年の歩みの中でありがたい摂理の道連れでした。
エイズ患者との出会いは、タイ語学校でソーニャさん(イタリアからのボランティア)に出会い、ジョバンニ神父を紹介されたのが始まりです。当時郊外の駆け込み宿舎で患者の世話をしながら一緒に生活していました。
タイ国は観光産業の勢いでエイズ感染死者急増、家族からも受け入れられず都心で悲惨な生活をしている人々に心を痛めたジョバンニ神父は『命を賭けてもエイズ感染者を救う』、会の使命を具体的に取り組み始めたのです。
特に見捨てられた末期患者の看取り、治療、感染を防ぐため工場やコミュニティーの人々を招き予防学習を頻繁に開くなど。国立の病院、仏教寺院、カトリックやその他の関係施設とも連帯し大惨事と取り組みました。
その頃、日本から『カトリックの機関にエイズと取り組む窓口を作りたい、1週間の予定でタイのカトリック内外の施設見学ツアー』をと、カトリック中央協議会から問い合わせがありました。関係するNGOで働いていた友人と要望に応える濃密な予定を組み、末期エイズ患者との出会い、各界の施設に案内しました。
タイに行って間もない私にとって、直に実情に触れ現実を知る貴重な体験でした。特に感染死者の多いパヤオ県でのエイズ患者との出会いは、当時生気無く心身滅入っていた私の息を吹き返してくれました。「主よ、私がタイでの宣教を続ける事を思し召しでしたらもう一度生きる力を…」と、脱力状態で主の海原に身を任せて浮かんでいた私に『今を真剣に生きる』気力が湧いてきたのです。
温かい理解のある関わりが何よりもの免疫力となる治療薬、正しい清潔な生活、栄養を摂り菌に侵されない様HIV治療をする等最善を尽くされていますが、2020年統計によると年間のHIV新規感染者数は150万人、AIDE感染死者は65 万人。生活と密接な感染の現実は厳然としています。
カミリアンの笑顔いっぱいの患者、特に子供達を胸に、苦しむ人々をいつも心に留めながら日本での宣教に励もうと思います。愛読者の皆さん、どんな状況にあっても、いただいた今日、今を精一杯生きて輝いていましょう。
(阿部羊子=あべ・ようこ=聖パウロ女子修道会会員)