・「希望の巡礼」の聖年を前に、「秋田のマリア様と東北巡礼」ー参加信徒たちの報告

   来年2025年は世界のカトリック教会にとって、「希望の巡礼」がテーマの聖年。その年を目前に、秋の”巡礼シーズン”を迎え、日本全国で様々な巡礼が企画されているようだが、東京の旅行会社・トラベリオが企画した「秋田のマリア様と東北巡礼」(2024年10月1日~4日)にはゴ・クアン・ディン神父と東京、千葉、宮城、福岡の4都県、36人のカトリック、プロテスタントの信徒が参加した。以下、参加者からいただいた原稿を掲載する。(編集「カトリック・あい」南條俊二)

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【10月1日:羽田―秋田―”秋田の聖母”の聖体奉仕会聖堂で十字架の道行き、ミサ】

   お昼少し前に羽田を発ち、昼すぎには秋田の聖体奉仕会修道院に到着した。木々に囲まれた広々とした草原が目に入り、バスが大きくカーブすると立派な日本家屋の修道院が現れた。純日本家屋で目を見張るものだった。浦野堂宮工芸の宮大工によって建てられた入母屋重層造りだという。

   家屋の上には十字架が掲げられていた。中に入ると聖堂も日本の神社を思わせる簡素な佇まいで、中央に祭壇があり、聖堂の横の小部屋に木彫りのマリア様が安置されていた。私たちはしばしマリア様のご像の前で祈り黙想し、秋田のマリア様にお会いできたことに感謝した。

  そのあと皆でミサを捧げ、先ほどバスの中から見えた草原のような“子羊の苑”と名付けられたお庭で「十字架の道行き」を行った。ディン神父様の先唱のもと心を込めて祈り進んでいくうちに木漏れ日の夕陽
が神父様のお顔を照らしていた。

(東京・カトリック小金井教会信徒 相知裕子)

 

【10月2日:秋田―平泉・中尊寺見学―水沢・水沢教会でミサ、後藤寿庵顕彰碑など見学―気仙沼】

 中尊寺の金色堂への道すがら、ガイドの方から印象に残る話を聞く。金色堂には、藤原清衡、基衡、秀衡の神体化した遺体と泰衡の首級が収められている。泰衡の首桶から、蓮の種が見つかり、50年後に開花。「中尊寺蓮」と命名され現代に至ったという、奇跡の花が中尊寺の蓮池に。

 平泉の深緑の山に、金色堂を元三千余点の国宝・重要文化財を伝える平安仏教美術の宝庫、中尊寺… 「夏草や 兵どもが 夢の跡 芭蕉」

 水沢教会は、昭和25年にベトレヘム外国宣教会によって宣教が開始されたことに始まり、昭和60年に現在の地に移った。水沢には、伊達政宗の家臣でキリシタン武士、後藤寿庵が治め、私財を投じて人々を助けた歴史がある。寿庵の影響で多くの家臣や領民が受洗して信者になった。水沢教会主催で毎年5月に「春の寿庵祭」が行われている。188殉教者の一人で福者のペトロ岐部はこの地で布教中に捕らえられ、江戸の浅草待乳山聖天近くで処刑されている

(東京・カトリック小金井教会信徒 小林明子)

 

 

【10月3日:気仙沼教会でミサー東日本大震災の遺構・伝承館見学―多くの殉教者を出した米川・三経塚殉教碑―大籠教会・キリシタン殉教公園】

   2011年3月11日…あの日以来、一度は被災地を訪れなければ、と思いつつ、13年の月日が過ぎ、ようやく思いが実現しました。

 市街地は復興し、何事もなかったのかのように日常生活が営まれていました。けれども、震災遺構伝承館、向洋高校を訪れた時、一瞬にして”あの日”に戻り、時が止まったような状態を目前にして、息が詰まりそうになりました。神様はなぜ、このような事をお許しになるのだろうか、と思い、およそ出来事に全てには意味がある、との教えを、そして神様のみ旨を、私の頭では到底、理解できるものではありませんでした。

 想像を絶する出来事の被災者に心を寄せるとはどういうことなのか、改めて自分の無力に気づかされました。町の復興のために人々が心と力を合わせて今日に至っていることを思う時、希望の光と神様の助けが見えたように感じました… 被災地と被災された方々を忘れず、祈りを続けていこうと思います。

(東京・カトリック小金井教会信徒 加藤恭子)

 

 被災地訪問の後、東北で最も多くの殉教者を出した米川、大籠地区、そして実際に殉教者たちが処刑された場所を巡った。理不尽な弾圧の中で殺害され、今も眠る人々…

 ショックだったのは、仙台教区長を務められた故小林有方司教が半世紀前、欧米まで出かけて援助を募り、立派な聖堂を作って、500人前後の信徒を擁したというカトリック米川教会に現在、信徒はわずか4、5人のみ、大籠教会にいたっては信徒ゼロ、という現実だった。”キリシタン弾圧”があったわけでは、もちろんない。

 東京教区も司祭、信徒ともに高齢化と減少が進み、一部に小教区の維持が困難になり始めているが、それどころではない事態となっているこの地域の現状を目の当たりにして、日本の教会の道筋を司教も、司祭も、信徒も真剣に考え、行動すべきことを、改めて痛感した。

(東京・カトリック小金井教会信徒 南條俊二)

 

【10月4日:仙台・元寺小路教会で初金ミサ、東北での殉教について講話―市内・広瀬川河畔のキリシタン殉教碑―仙台市博物館で支倉常長関係資料見学】
 最終日は、元寺小路教会での初金ミサから始まりました。ミサ後、高橋神父様から仙台・広瀬川殉教〜東北キリシタン殉教について講話がありました。手作り地図、御言葉が並記されている資料を拝見しながらの講話がとても良かったです。『信仰は自分だけのものではない、伝えていく事が大切」と心に沁みるお話でした。
 昼食後、広瀬川畔の仙台キリシタン殉教碑へ 真冬の川で水籠で水責めの拷問を受けられたディエゴ・カルヴァリョ神父様と信徒の方々の顕彰碑と広瀬川に向かって私たちの個々の静かな黙祷が印象的でした。
 仙台博物館では、2013年にユネスコの「記憶遺産」に登録された国宝3点『ローマ教皇パウロ6世像』『支倉常長像』『ローマ市公民権証書』を拝見しました。支倉常長の活躍、伊達政宗の知恵が詰まった鎧や兜や所用物に感動しました。ローマ市公民権証書は、支倉常長がローマ市民として認められたことを意味する証書です。その頃、日本がいかに積極的にヨーロッパと関わろうとしていたかを示す貴重な証拠を拝見できて、本当に感激しました。
(東京・カトリック小金井教会 望月美代子)
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2024年10月18日